楳図かずおのホラー漫画「おろち」を読んでみました。
けっこうおもしろかったです。
楳図かずおのマンガってリアルタイムでは
まったく読んでないし、
たいして読んでないですね。
「漂流教室」を読んだことあって
めちゃくちゃおもしろいって思った記憶があるぐらいです。
そもそも楳図かずおがいつの時代の漫画家なのかが
よくわからなかったりします。
70年代の人なのか、80年代の人なのか、
もっと古い人なのか、新しい人なのかも
よくわからなかったりするなあ。
子供のころは少年ジャンプとかマガジンとかが
全盛だったけど、楳図かずおって連載してましたっけ?
まわりに楳図かずお読んでるという人
まったくいなかったし
自分で発見するということもなくて
楳図かずお体験することなくて
今まできてる感じです。
今回何気なく手に取った「おろち」ですけども、
1話読み切りのホラーオムニバスで
どの話もおもしろかったです。
モノクロのクラシックなホラー映画、
サスペンス映画のムードがある。
おろちっていう名前の少女の姿した
人間ではない超越した存在が
人間に興味をもって人間を観察する。
おろちが見守る人間たちの間におきる
恐怖のドラマを短編で見せていく感じです。
なのでおろちは主人公ではなくて、
ストーリーテラーですね。
狂言回しっていうやつ?
基本、人間のどろどろとした感情のドラマです。
積年の恨みはらさでおくべきか~っていうね。
あと人の裏表。
ニコニコ笑ってる人が腹の底でも笑っているとは限らない。
優しくて冷静で神々しい人に見えても
裏の顔はどうだかわからない。
こういう、人の強い情念による行動の怖さや
表面はとりつくろえても
本性は隠せないという怖さのお話を
映画的なサスペンスや怪奇やホラーな
お話で見せてくれます。
絵も映画的っていうかね。
顔のアップになったりするのが効果的なんすよねえ。
目元だけのアップとかさ。
第1巻
「姉妹」
18歳までは美しいが十八歳をこえると
人と思えぬほど醜くなる龍神家の姉妹の物語。
「骨」
死んだ夫の遺体がおろちの術によって生き返ったことにより
おきた悲劇。
私のUMEZZ体験
ASKAによるあとがき。
第2巻
「秀才」
家に侵入してきた暴漢に首を刺された傷をもつ男の子が
母親から虐げられてひどい仕打ちを受け続けるその理由とは。
「ふるさと」
田舎を捨て都会で暮らす男が大けがをして
ふるさとに帰りたいと願って見た幻想。
「カギ」
嘘つき少年がお隣さんの犯罪を目撃して親に言うが信じてもらえず
一人奮闘する。
第3巻
「ステージ」
父親がひき逃げされて犯人を目撃した3歳児が証言するが
証言は信用されず犯人は無罪となるが、
少年は復讐のために歌手を目指す。
「戦闘」
自らを犠牲にして他人にやさしくつくす父親が
ガダルカナル島の戦場で犯したという罪を知り
父の生き方は偽善だと苦しむ少年だが
自身の洞窟遭難騒ぎを体験して
過去はどうあれ今の生き方が重要なのではないかと気がつく。
第4巻
「眼」
盲目の少女が家でおきた殺人事件にまきこまれ
犯人と戦うことになる。
「血」
優秀で優しい姉といつもくらべられて虐げられてきた妹が
長年にわたる恨みをはらす。
全部で9話。
おもしろいのが、おろちが見てるだけじゃなくて
余計なことをやってそれで問題が大きく悪くなってることが
よくあるとこですね。
まあ、観察者というより、
ものすごく近くで影響与えてる存在って感じですね。
お手伝いとして屋敷に入り込んだり
あるときは看護師になったり、
あるときは精神だけ人間と同化したり。
あと、絵ね。
絵柄は好きな感じです。
黒が多い印象があるんだけど、
白い余白が多くてうまく使ってるので読みやすいです。
気になるというか、おもしろいなと思うのが
走ってる絵が、走ってるようには見えないとこかな。
宙に浮いて一時停止してるようにしか見えない。
楳図かずおマンガは他もこんな感じだったっけ?
人間って走るとき前傾姿勢になると思うんだけど
楳図マンガでは前傾姿勢で描かれないので
その場で宙に浮いて一時停止してるように見える。
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