辰兄の自伝本。
あとがきに2019年11月とあって
亡くなったのが12月なので
亡くなる直前にまとめられた
遺言のような本ですね。
共演したスターたちの素顔や
映画製作の裏側の話です。
鶴田浩二、高倉健、勝新太郎、若山富三郎
菅原文太、山城新伍、松方弘樹、
渡瀬恒彦、大原麗子、安岡力也
田宮二郎、深作欣二らとのエピソード満載。
高倉健さんの包茎手術話とか
え?ほんとにそんなことあったのか
みたいな話も読めます。
梅宮辰夫がこう言ったとかああ言ったとかいう
笑い話のほとんどが
山城新伍の創作おもしろトークで
ほんとのことじゃないとか。
もともとお父様が医者で
自分も医者になるつもりだったけど
東映ニューフェース試験に合格。
いい女を抱く、いい酒を飲む、いい車にのる、
一等地に家を建てるを目標に役者を始める。
役者として評価されたい、演技が好きとかいう
ことじゃなかったみたいですね。
当時、役者が稼げる仕事だったからやり始めただけで
長く続けるつもりもないまま
なぜか何十年もやることになったみたいなことらしいです。
やっぱり映画の黄金時代の話は面白い。
邦画が娯楽の中心だった時代の
スターの話ってみんな知りたがるけども
今じゃ失われてしまって
また同じような時代が二度とはこないから
知りたくなるんだろうね。
夢がある時代っていうかなあ。
そういう時代を生きた辰兄。
梅宮辰夫さんぐらいの年代が
最後の映画黄金時代を知る世代になるのかな。
でもあんまり梅宮辰夫さんに
映画俳優のイメージありません。
物心ついたときには
すでにテレビに出てる料理好きのおじさん、
梅宮アンナのパパっていうイメージしかなかった。
大人になってから
「仁義なき戦い」とか見て、あ、昔俳優だったんだって
思うぐらいで、「不良番長」シリーズも
見たことないもんなあ。
梅宮さんが出演作で一番好きで代表作だと思ってるのは
不良番長シリーズでも仁義なき戦いでもなく
「花札渡世」という作品だとか。
成澤昌茂監督で共演は
伴淳三郎、鰐淵晴子、遠藤辰雄、西村晃。
映画の内容もよかったみたいだけど、
共演の鰐淵晴子さんがものすごくタイプだったのが大きいみたいです。
ステージママがいつもはいりついてたので
食事にもさそえなかったと残念そうにしてるのが
おもしろい。
こういう自然体な感じが辰兄の魅力かな。
気難しい顔して演技論とか俳優論とか言わずに
いい酒飲んでいい女抱いていい車ころがして
楽しく生きたいから役者やってんだっていう
欲望に自然なところが魅力なんだなあ。
今じゃ芸能人ですらそういう欲望を表に出しちゃうと
何かと叩かれて炎上する時代になってるのが
なんか寂しいような、それも時代の流れでいたしかたないような。
やっぱり映画黄金時代は夢のある時代ですねえ。
あと意外だったのがガンをいくつも患ってたことですかね。
睾丸がんに始まり肺癌、胃がん、十二指腸乳頭がん、
前立腺がん、尿管がんにかかってそのつど手術したり
抗がん剤やったりしてたというんだけど、
辰兄に病気のイメージがまったくなかったので
驚きました。
真っ黒に日焼けして釣りに料理に
エネルギッシュにやってるイメージしかない。
映画スターは普段からパリっと見せないといけない
という気概が病の影をまったく感じさせなかったのかなあ。
昔の映画スターはエネルギーというか
オーラがやっぱ普通の人とは違いますね。