ソード電算機システムからソフトバンク入りして孫正義の片腕としてヤフージャパンを立ち上げ16期増収増益企業に育てた人物で55歳で社長を退任。引退後は豪奢な別荘を建築してそこにクラシックカーのコレクションやワインコレクションをならべて趣味人として生きていたがアメリカでのクラシックカーレース参加中に交通事故をおこして60歳で亡くなった。
なんともドラマチックな人生ですね。インターネット黎明期にまだ海のものとも山のものとも知れないポータルサイト事業を日本で始めて、それがネットブームにのって倍々ゲーム的に巨大に成長していく。ヤフーの株価が1億円こえたとか当時話題になったのを覚えてるなあ。あの中心地にいた人が井上雅博氏かあ。
この本読んでて当時のことを思い返して懐かしくなりましたね。あのときインターネット回線はまだ電話回線で、つなぐときにダイヤルしてピーヒョロヒョロ、ンガーッンガーッってモデムの音がするわけ。今みたいに常時接続じゃない。よーし、これからインターネットつなぐぞって感じ。電話代がすごくかかるから、深夜定額になるテレホーダイサービスにはいってネットやってたんすけど、これ深夜から明け方までの定額サービスだから、生活パターンが超夜型になっちゃって、昼夜逆転生活で廃人みたいになってました。毎日夜中インターネットやってたけど、いったい俺は何をそんなに見ていたのかと今考えるとよくわからない。当時は文字としょぼい画像しかないサイトばかり。速度は激遅で画像なんか読み込みに時間かかって徐々にしか表示されない。動画なんかうめこまれていても小さい表示枠でコマ送りみたいなものしか表示できない。今と比べたら原始時代も原始時代でアメーバやプランクトンの世界みたいなもんだけど、なんであんなに熱中していたのか。やっぱ新しいメディアが始まったっていう熱気みたいなものを感じていたのかな。あのときのヤフーのサイトはたいしたことなかったような気がするな。ディレクトリー型検索エンジンっていうやつで、ヤフーの人がこれはというサイトを見つけてきてヤフーディレクトリーに登録してあっただけだったような。今考えたらただのリンク集じゃないかみたいな。そっから少したってからかな、グーグルっていうすごい検索エンジンがあるぞってなったのは。今じゃ世界を制覇してるようなGoogleなんすけど、出始めのときにGoogle使ってて、友達にこれで検索したら便利だと言ったら、ごーぐる?そんなマイナーなのダメだろって言われたのを思い出します。いろんな検索エンジンやポータルが乱立してたけど、今も存在感あるのはヤフージャパンぐらいですかね。本家の米国ヤフーが消滅しちゃってるんだから、ほんと時代の趨勢はわからんもんです。ヤフージャパンにしたっていつ消滅するかわからない。PayPayがスーパーアプリ化してスマホ時代のポータルの天下をとったりしたら、YahooじゃなくてPayPayに名前かわったりするかもしれないし。
まあそういう激動の時代を駆け抜けていったという点では、まさにならずものって感じがするんだけど、ヤフーに対してはそういうとんがったイメージは昔からあんまないんすよねえ。アメリカのサービスを日本向けに日本人が使いやすいように作り直してるサービスっていうイメージで、どちらかというとあんまり冒険しない、手堅いことを地道にやってる保守的なイメージがあります、ヤフージャパンにたいしては。孫さんがギャンブラーとしてあれこれ派手にぶちあげるからソフトバンクには尖ったイメージがあるけど、ヤフーにたいしてはそんな感じがあんまりしない。先行者利益でうまくやってる企業みたいな。ネットブームの中心にいたような企業なのに、先鋭な感じがまったくなくて、旧態依然とした昔の企業みたいな地味さを感じます。よく言えば真っ当な商売やってる企業。ネット企業とか新興企業ってむちゃやるっていうイメージあるけど、ヤフーってそういう感じしない。社長だった井上雅博という人が、ただの変わり者とかオタクだとかではなかったということなんすかね。だからこそ、日本のヤフーが今でも生き残ってるのかもしれないっすね。
井上雅博さんは社長室でガンプラ作ったりミニカー集めたり、クラシックカーにはまったりオタク的な面があったみたいなんすけど、そういうオタク的な感覚だけでなく、サービスを使う一般の人目線の感覚も持ち合わせていたからヤフーが育っていったのかもしれないなあ。まあ、この本を読んでも井上雅博という人がどういう人なのかは、よくわからなかった。本人がメディアに出て多くを語るような人じゃなかったみたいですね。だから情報があんまりないのか、関係者の証言を集めてるんだけど、それでもあんまりどういう人なのかわからなかった。ソフトバンクはいる前にアムウェイにはまったりしてて、よくわかんない人だなあみたいな。なんだか謎めいてる。