経済的な成功が幸せなのか。生きるのがやっとでも生きがいをもってるのが幸せなのか。60歳を越えても、まだ惑うのが人間だみたいな。大佛次郎の小説が原作。川島雄三監督。森雅之、三橋達也、北原三枝、芦川いづみ、新玉美千代、左幸子出演。
森雅之演じる村上春樹は若いとき将来を嘱望された画家だったが、絵をやめてカメラ製造会社をたちあげ成功していた。芸術より実業をとった人ってことかな。
妻と30歳になる息子、三橋達也、小児麻痺をわずらいかよわい娘、芦川いづみと大きな屋敷で何不自由なく暮らす日々。
三橋達也は森雅之の会社で営業部長かなんかを適当にやって愛人の新珠美千代をかこってお気楽道楽生活です。
もうそろそろ新珠美千代にも飽きてうざったい感じになってきたところにシャンソン歌手の北原三枝を紹介されて乗り換えようかとドライに動く金持ちのボンボン。
芦川いづみは引きこもって絵を描くのが生きがいのひ弱な娘だが純真な心の持ち主で新珠美千代が兄の世話を真剣にやってるのを嬉しく思い彼女になつく。
三橋達也に捨てられた新珠美千代は思い詰めて自殺。芦川いづみがお見舞いにいって献身的にお世話をしたりして命はとりとめるのだが、新珠美千代はすぐにガス自殺して死んでしまう。三橋達也は、もう関係ない人が死んだだけだと冷たい態度をとるのだがそれを見た森雅之はぶちぎれるわけ。息子がこんな人の心のわからないやつになってることに愕然とする。三橋達也は森雅之の経済的成功にのっかって贅沢生活するだけの人生をおくってきて自分で自分の人生をきりひらく生き方をしてきてなかった。
これはあかんと、森雅之は三橋達也をクビにして別の会社にいって見習いとしていちからやり直すように言う。
森雅之自身も社長をやめて若いとき過ごした京都に引っ越してやりたいことやって生きることを宣言。
嫁はそんなバカなと一緒には行かないという。芦川いづみも家族がばらばらになるのは嫌だと一緒には行かない。
森雅之が京都に行くことを決めたのは息子の事件もあるんだけど、京都でかつて下宿してたとこの娘さんが左幸子なんすけど、両親がなくなって弟の学費を稼ぐためにバアに勤めてときどきヌードモデルとかやってるのを知ったからっていうのもありますね。
左幸子は裕福じゃないし、生活は苦しいんすけど弟のために頑張ってることが苦じゃないって感じで、卑屈になってなくて明るいし、弟のほうも素朴でまじめないい青年なんすよ。
こういう生き方のほうが、今までの自分の生き方より自然で幸福なのではないのかと森雅之は思ったんだろなあ。
もう60歳ですよ。経済的に成功して、家族もいて、あとはのんびりやるかみたいな人生の終盤にさしかかってるのにやっぱ違うなあって思って全部捨てて新しい生き方を選ぶ。
何が幸福なのか、何が理想の人生なのか。それは死ぬまでわからない。だから死ぬまで生き方に迷っていくのが人間なんだなあみたいな。風船のように、あっちこっちふわふわし続けるのが人生。
DMM動画:風船