ゼロで逝くを目指せ。
これは危険ですね。この本は、すでに死ぬまで使いきれないほどの資産を保有している人と働けば働くほど収入が増えるような仕事についている人向けの啓発本です。簡単にいうと、もう十分お金をもってるのに、そんなに働いてどうするの?それ以上儲けてどうするの?それより有意義なことに時間を使おうよっていうことです。死ぬときに財布にお金がまったく残ってない状態を目指して今を生きようよっていう話。若さはお金で取り戻せない。時間はお金で巻き戻せない。
二度と取り戻せないものよりも、お金を稼ぐことを優先する人に向けて、ちょっと考えてみてくれよという内容です。
著者はウォールストリートでトレーダーとして成功し、現在1億2000万ドルの資産を運用するヘッジファンドのマネジャーだとか。お金を稼ぐプロであり、稼ぐことに成功した人。やればやるほど、うまくいけばいくほど収入が増えていく職についてる。
同じようなファンドマネジャーとか会社経営者とか資産家とかのお仲間に向けての本であって、庶民にむけての本ではないです。
そこを勘違いして、内容に影響をうけて、そうだよな、墓にまでお金は持っていけないから、宵越しの銭はもたねえぜと、自己投資と称した無駄遣いにせいを出すとやばいことになるから注意が必要かな。
若いときは借金して旅行行くぐらいがちょうどいい。若いときの体力と時間は二度とは取り戻せない。若さはもっとも価値あるもので、あとで取り返すことができない。お金なんて後からいくらでも稼げるし、年を取るごとに必要なお金も減るし、そんなに躍起になって日銭を稼ぐことに時間を使わなくていいですよって。
いやさあ、いずれ稼げる、今よりも給料はあがる、そういう見通しがぼんやりでもたつのであれば、その通りなんすけどね。給料右肩下がり、未来の明るい希望なし、お先真っ暗の日本で、成立するのかな、こういう考え方。
高齢者が何千万円も残して亡くなるのを例に出して、こんなにお金を残すよりも、若いうちにお金をもっと使って、いろんな体験や経験をして人生を豊かに過ごしたほうが、よりよかったんじゃないのかっていうけども、それは結果が確定したところから過去を見返してるから言えるだけでどうなんかなっていうね。
まあ、どうせ何しても将来の備えなんて十分できないのだから、いい思い出を増やすように日々を生きようということなんでしょうか。勝ち逃げ完了してる人に言われてもなあって感じするなあ。
著者が現在、資産もなくその日暮らしで生きてる人でこの内容であれば、なるほどって思うんだけど、お金の心配する必要がない人が、お金の心配でかつかつの人にむかって、お金の心配するなよって諭してるみたいでなんだか腑に落ちない。
何かすごい違和感を感じてしまう。若いうちは貯めこまずにどんどん使って経験や体験に時間を使えっていうのも、もっともらしく聞こえるけども、あるだけ全部使って暮らすことを覚えた若者が、どんな大人になるのかというと、あるだけ全部使う大人になるわけで、死ぬ前にゼロになるのがオチです。
いいこと書いてることは書いてるんだけど、どうもなあ。若いうちにやりたいことはやれっていうのはその通りですね。中年すぎると体力と気力の落ち込みがものすごいです。
20歳代だったらなんともなかったことが、体にこたえるようになってしまう。ただ難しいのが、やりたいことをやれと言われてもやりたいことがなんなのかがわからなかったりするんです。
あちこち旅行に行こう、あれこれ挑戦しよう、思い出を作って記憶の配当をためようって言われても、旅行に行きたいとも思わないし、挑戦したいこともないし、毎日ダラダラ過ごしたいのがやりたいことだったりするんだよなあ、若い時って。
それで年食ってから、若い時にあれしとけばよかったとか、若ければあれできるのにとか思うんだけど、それは若い時に戻れないからそう思うだけで、もしもう一度若い時に戻れたとしても、実際はやらないと思う。
人って実現しなかったことの価値を大きく見積もるからね。後悔せずに生きるって難しい。
働きすぎたと思う人は、もっと自由に遊ぶ時間を作ればよかったと後悔する。遊びすぎた人は、もっと意義のある仕事をもって勤勉に働くべきだったと後悔する。家庭をかえりみなかった人は、もっと家族との時間をすごせばよかったと後悔し、家族にかまいすぎた人はもっと一人の時間を大切にするべきだったと後悔する。
結局、なにが正解なんてわからない。有意義なお金の使い方もわかんないですよね。後からあれはよかった、無駄だったってわかるわけで。
今を冒険する。毎日が冒険であるという意識をもって生き急ぐべきだということですかね。将来の備えのためや、未来の不安のために、今という時間を使うのではなく、今の時間を今この瞬間のために使おうというススメかな。
こうしてあれこれ考えて答えがでないと思い悩んでいる間も、時間は過ぎ去っていくという恐ろしさ。年取るとほんと時の過ぎ行く無常さが怖くなります。年々残り時間は少なくなっていく。できることも減っていく。このままいくとどうなっちゃうのって漠然とした不安だけが膨らんでいく。若いときはこんなことなんにもおもわなかったのになあ。