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『三島由紀夫 石原慎太郎 全対話/三島由紀夫 石原慎太郎』を読んだんだ【読書】

三島由紀夫x石原慎太郎

三島由紀夫と石原慎太郎の対談集。昭和30年代から40年代にかけての対談なので、なかなか難しいです。当時がどういう時代だったのか、当時、三島由紀夫や石原慎太郎がどういう存在だったのかを知ってないと、対談の内容がよく理解できない。そういう知識がなく読んでも、なんだかよくわからないって感じになります。知らなくてもおもしろいタイプの対談じゃないなあ。三島由紀夫とか、石原慎太郎とか、文学とか好きな人向けですね。自分は三島も石原もよくわかんないから、ちょっと難しかったです。三島さんは、自衛隊で演説して割腹自殺した人で、石原慎太郎は石原裕次郎の兄っていうぐらいの認識なので、両者の文学にはまったこともなければ、同時代を生きたわけでもないし。何冊かは読んだことあるけどね。どうもどっちの小説もピンとこない感じだった。

三島由紀夫はなぜ腹を切ったのか

三島由紀夫はなぜ腹切りしたのか?創作の敗北を感じます。三島由紀夫はあれだけ耽美な文章で小説を書ける力が若くしてあったのに、晩年はボディビルを始めて体を鍛えだす、剣道や居合をやりだす、私設軍隊“盾の会”を結成して国を憂いだす。それで最後が腹切り自殺。どれも現実でやらずに、創作の中でやればいいことだと思うんすよ。マッチョになりたければ、小説でマッチョを描けばいいし、腹を切りたければ作品の中で腹を切ればいい。軍隊を作ってクーデターしたければ、そういう創作作品を書けばいい。創作でそれをやっても満足できなかったわけですよね。だから、小説ではなく現実のほうを作り替えようとし始めた。それがなんか悲しいというか、ああ、やっぱり創作は創作でしかなくて、現実には勝てない。創作の敗北を感じて悲しくなっちゃう。文学とか芸術とか、無限の可能性があるような気がするけど、結局のところ現実には勝てない。虚弱体質でヒョロヒョロの小説家じゃ満足できなかったんすかね。創作の行き詰まりというのがあったのかもしれないですね。

作家としての衰弱

あとがきに2010年の石原慎太郎のインタビューが掲載されてるんだけど、そのようなことが書いてありました。最後の大作「豊饒の海」での三島由紀夫の小説家としての衰弱が明らかで、気の毒で泣いたとあります。自己模倣に陥ってかつての輝きを失ってしまったのがわかって泣けたと。三島由紀夫の居合が形だけのもので、まったくフィジカルに身についていないものだったというのも書いてます。確かになあ、三島由紀夫が真剣で居合道の演舞っていうんすか、形を披露してる動画とか見ても、日本刀を御しきれてなくて危なっかしい動きしてますもんね。

三島由紀夫はバーチャル

三島由紀夫はすべてバーチャル、虚構だったと結論づけてる。三島さんはほんとに天皇を崇拝していたわけでもないし、最後の自殺劇も政治行動ではなかったと。事件の日のことも書いてありました。ホテルニューオータニで仕事をしてたら事件の知らせがあって、近くだから現場に行ったら川端康成が来てて、石原も警察に現場を見ますかと言われたけど見なかった。川端康成は見たから後々精神に変調をきたしたんじゃないかと。ほんまかいな?警察が現場を見ますか?なんて言うかな?作家の話は話半分で聞いたほうがいいけど、そういうことあったんですかねえ。なんか石原慎太郎が三島由紀夫をバカにしてけなしてるような雰囲気に見えるけど、同族嫌悪なとこもあるんだろうか。石原慎太郎氏も小説家から政治家になって創作よりも現実をいじくりまわすほうを選んだ。創作の世界で作品作りをするのに行き詰って、現実のほうをいじくるほうに向かっていったという点で三島由紀夫の気持ちがよくわかるゆえの物言いなんだろか。三島さんはホモセクシュアルに徹するとか、悪趣味に徹するとかしたら強い人間になったのにというしめくくりの言葉がなるほどなと思う反面、そうできたら苦労しないだろうねと思うような。なんだか難しいですね。人間の生き方って。創作ってなんだろね。いくら創作して作品をつくっても、現実の虚しさを埋めることができない。創作の敗北。想像力、芸術、創作は現実に勝てないのか。

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