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『それから』【映画のあらすじとネタバレ感想】


夏目漱石の原作を森田芳光監督、松田優作、藤谷美和子で映画化したもの。松田優作の異物感がすごいです。なんかもうわけのわからない存在感。何を考えているのか、何者なのか、さっぱりよくわからない異形のもの感がすごい。

松田優作の身体的な特徴がそう感じさせるのかなあ。背が高い。手足が長い。細い目。なんかいるだけで、掴みどころがない男という感じがします。この話の主人公ってそういう掴みどころがよくわからない男ですよね。

親が大地主かなんかで相当な財産家で兄は実業家で裕福。親や兄の仕送りや経済的支援で30歳をこしても何もせず世間の人並み以上の暮らしをしている高等遊民。父親や兄は、あいつもそのうち結婚して家庭でももてば、なにかやる気になるだろうとのんきにかまえてる。

大金持ちの次男坊。まあ、長男の中村嘉葎雄がちゃんとやってるので、次男の松田優作に親は期待してないので、何もせずぶらぶらしてても、勘当されるわけでもなく、学生気分の延長のまま放置されてる。

縁談をもってこられても、はいと素直にうけない松田優作。それは学生時代からの親友、風間杜夫の妹で、学友の小林薫と結婚した藤谷美和子への秘めた恋心があるからです。

なんかもうすごくウジウジしてんだよ。後悔。あのときなぜあんなことをしてしまったのか。あのときなぜこうしなかったのか。後悔の念の中でウジウジし続ける松田優作です。もう過ぎ去ったことなんだから、忘れて次に行けばいいのに、行けないのでいつまでもなんにもできないニートになってる。

藤谷美和子のことが好きで、藤谷美和子のほうも松田優作のことが好きっぽいのに、なぜ好きです、一緒になりましょうと学生のとき素直に言わなかったのか。

小林薫が藤谷美和子をもらおうと思うといったときに、変な義侠心から応援すると言ってしまったことへの後悔。

思ったとおりに行動できなかったおとこの後悔。それが延々と描かれる。森田芳光監督の独特な森田芳光なムードとあいまって不思議な時間が流れる。

なかなか変で面白いです。松田優作と藤谷美和子の姦通をイメージ映像みたいに婉曲表現であらわしてるのがいいですね。二人が実際に抱き合う映像はないけど、二人は小林薫がいないときに通じているのが、花を通してとか、藤谷美和子がラムネ瓶をラッパ飲みするとかで表現されます。

あれはなかなかだなあ。藤谷美和子の儚い感じがいいのです。キャスティングもなかなかおもしろい。松田優作の家の書生が羽賀研二。若い。なんかすごいフレッシュな若者で演技もなかなかよかったです。

父親役は笠智衆。なんか父親というには年寄りすぎるような気がするけど、まあ、松田優作は年取ってからできた子供っていうことなんだろね。だから甘いのか。物書きでイッセー尾形が出てきたり、姪が森尾由美だったり。

お見合いの相手は美保純。みんなめちゃ若い。草笛光子さんはあんまりイメージ変わってなかったけど。あの髪型が似合って違和感ないってすごいですね。

うわー、なんか自分が子供のころによくテレビで見た芸能人の若いときだあってなって懐かしさがわいてきました。

そんでお話は、もう耐えきれなくなって松田優作は、ぼくには好いてる人がいる。それは人妻の藤谷美和子なんですということを明らかにする。小林薫は激怒。笠智衆や中村嘉葎雄も激怒。絶交だ、縁切りだ、勘当だと松田優作は捨てられる。

さて、それで松田優作と藤谷美和子がどうなったかは、わからぬままエンド。原作もそうだったですかね?勘当されるところで終わったっけ。

まあ、なんの話なのかというと、よくわからない話なんだけど、恋愛ものでもあり、不倫でもあり、金持ちボンボンの放蕩生活でもあり、行動できない男の自己憐憫の話でもあり、変な見栄をはったり、変な遠慮をするとあとあとろくな結果にならない物語でもあり。

松田優作は負い目を感じて生きてきた男に見えたなあ。相当な財産家の家に生まれて何不自由なく生きてきたはずなのに、なぜあれほど虚無なのか。生まれてこのかた、すべてが用意されていて、なにひとつ自分で獲得したものがないことへの負い目が彼を押しつぶしている。

何をやってもそれは親や家のちからであってぼくの手柄じゃない。だから松田優作はなにもする気になれない。藤谷美和子を好いて、一緒になってくれといって、彼女がはいと言ってくれたとしても、それはぼくじゃなくて財産家の親がいるぼくだからだと思ってしまうと、行動できない。

不幸だなあ。お金がありあまっても不幸になってしまうこともある。じゃあ、お金がなかったら素直になれて思ったように行動できて幸せかというとそういうわけでもないけどね。

うじうじしてそのまんまうじうじで終わるのかと思いきや、気持ちは抑えられずにいまさらという段階で行動を起こす。これは悲劇だね。なんていうか、森田芳光監督ならもっと喜劇っぽいトーンで描いて悲劇を際立たせるという見せ方もできたように思う。

でも文芸作品、文豪の文学映画ってなると、やっぱりこういう荘厳なムードになっちゃうのかなあ。


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