リジー・ボーデン事件
実際の事件をもとにした映画。ジャンルはなんでしょうか。サスペンス?ヒューマンドラマ?ミステリー?よくわかりませんでした。邦題とおどろおどろしい表紙写真で、B級スプラッターホラー映画みたいに思えるけど、中身は全然そういう系じゃなかったです。邦題つけた人、絶対狙ってるもんなあ。内容が地味なので、そのままの原題じゃ話題にもならないから、なんかすごいはじけたホラー映画っぽい感じにパッケージして、そういう系が好きな人を呼び込もうっていう意図が透けて見える。
なんかこういう感じで、一応有名俳優が出てるけど、内容は地味で、一般受けしそうもない映画の邦題とジャケット写真をいじってエンタメ全開のはじけた系映画っぽく見せる手法ってけっこう見かけるけど、そういうことする映画って、
中身がすごい地味で、悪くはないけど、そんな気楽に楽しむ系じゃない映画なんすよねえ、だいたい。
監督はクレイグ・ウィリアム・マクニール。出演はクロエ・セヴィニーとクリステン・スチュワート。2018年の作品。
無料動画のGYAO!でやってたのを見ました。この二人の名前を知ってたから目に留まって見ようと思ったけど、知らない俳優が主演だったら見てなかったっすね。邦題がいかにもつまらなそうなので。
シンプルに「リジー・ボーデン事件」でよかったような気がするけど。1892年に起きた惨殺事件の真相を描いてます。真相っていうか、犯人も犯行動機も明らかになってないらしいので、これが真相っていうわけでもないみたいですけどね。
クロエ・セヴィニー演じるリジーは裕福な町の大地主の娘。クリステン・スチュワートはその家で働くメイド。クロエ・セヴィニーと父親は仲が悪くてしょっちゅう衝突してます。
女はこうしろ、ああしろとか、家名を傷つけるようなことはするなとか、男性上位な考えが当たり前の時代、体面を保つのが重要な時代なんすねえ。
思い通りに型にはめようとする父親。それに反抗するクロエ・セヴィニーって感じです。母親との関係も微妙です。ほんとの母親は死んでて、今の母は後妻で全然打ち解けてない。
姉がいるけど、姉は弱気で相談相手にもならない。がんじがらめにしばられて自由を感じることができない、閉塞感に追い詰められていくクロエ・セヴィニーって感じです。
クリステン・スチュワートのほうも行き場がなくて追い詰められていってる感じの人です。移民で貧乏で働き口も選べない。この家を追い出されたら路頭に迷うから、旦那様の夜の訪問を受け入れなくてはいけない。
身分も立場も違うクロエ・セヴェニーとクリステン・スチュワートだけど、境遇に共感するとこがあって、二人の距離は接近。同性愛にまで発展する。
二人がキスするかしないかみたいに顔を近づけあってるシーンのクリステン・スチュワートの耳が真っ赤で、興奮を演技で見せるために耳まで充血させるなんて、演技派だなあって思ったね。
クロエの父親はすごい財産あって、相続をどうするかって考えてて、姉妹の後見人に叔父を指名しようとしていた。これは叔父の策略だったというふうに描かれてました。
脅迫状が何度も家に送り付けられてて、それで不安になった父親が、もしものときのために身辺整理するのに叔父を頼るだろうという目論見で、叔父が脅迫状を送っていた。
父親に自由を奪われ、また叔父に同じようにでかい面されるのかとうんざりしたクロエは父と母の殺害計画をクリステンと一緒に実行しようとするってわけです。
斧で滅多打ちにするんだけど、返り血を服にあびないようにするために全裸なんすよ。クロエがまず全裸で継母を殺す。豪快に斧を振り下ろす全裸のクロエ。次はクリステンが全裸でクロエの父親を殺すっていう手はずなんすけど、彼女は実行できない。
全裸で斧をもってできないと泣くクリステンがなんか変で笑っちゃったなあ。怖いシーンなのに、妙に冷静に見てしまって、クリステン・スチュワートの腕が筋肉ムキムキで、すげええ鍛えてるなとか、映画と関係ないこと考えちゃってました。
結局、父親のほうもクロエが斧で滅多打ちにしてました。まあ、それで警察の捜査があって、クロエが容疑者で裁判になるんだけど、無罪になります。町の有力者の娘であること、証拠が不十分なことなどから、なあなあな裁判が形式的に行われただけで、事件は迷宮入りです。
これでクロエとクリステンは一緒に自由を謳歌するのかと思いきや、クリステンはクロエから離れていきます。クリステンは、ただクロエと一緒にいたかっただけなのに、気持ちを利用して殺人に加担させたのが許せなかったかなんかが理由で。
まあ、そんな感じで終わりました。父親、男社会、家に縛られる息苦しさの鬱憤が殺人事件につながったみたいな感じかな。自由になるってのは大変なことなんすよねえっていうことっすかね。
お金があっても自由になれるわけじゃない。お金がなくても自由になれるわけじゃない。諦めが肝心ってことっすかね。理不尽でも不自由でも、社会がそうなってるんだから、世界がそうなってるんだからって、自分をごまかして死んだふりで時間をやり過ごすしかないのか。逆らって戦おうとすると、戦い方を間違うと大変なことになる。
斧を振り下ろすことで、リジーは自由になれたのか。自由を感じたのか。