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まるで松本清張ミステリー『女帝 小池百合子/石井妙子』【読書】

まるで松本清張ミステリー。襤褸を出してるのに、アウトにならずに出世していく人間っているんですよねえ、どこの世界でも。そんなことしたら、普通にアウトでしょっていうようなことをしてるのに、なぜかアウトにならない。むしろ高みに上っていく。人を裏切ったり、期待を損なったり、成功したければしてはいけないと常識では思ってしまうようなことをやる。むしろそういうことしかしない。なのにどんどん上に行く。強運なのか、人たらしの才能なのか、なんなのか。うーん、小池百合子っていう人にとくに興味をもってなかったんすけど、この本を読んだら興味わいてきましたね。ピカレスク小説としておもしろく読みました。小池百合子氏のカイロ大学主席卒業が本当か嘘なのかは、よくわからないし、小池百合子にひどい目にあわされたという人の言い分が正確なのか正しいのかも判断つかないので、この本に書かれていることが事実かどうかは正直よくわからなかった。あまりにも著者の想像で、小池百合子の心情をこうだったに違いないと書きすぎてる。取材できなかった部分を、小池百合子が秘密主義で嘘がばれたくないから隠してるとして、ぼかしてるし。なので小説を読むような感じで読みました。事実かそうでないかを横に置いて読むと、ほんとおもしろい。虚飾にまみれた父親を憎みながらも同じように他人を利用して生きていく生き方を選び、テレビキャスターとしてメディアに潜り込み、政界に進出し、機運を的確に読んであっちこっちの権力者に取り入って、どこまでものぼりつめていく小池百合子。男社会で名誉男性としての地位を築いて出世していく。キャラクターとして面白すぎる。
小池百合子の父親のことも、すげえろくでなしでひどいやつって描かれてて、どうなんだろって思ったけどね。まるで松本清張の小説に出てくる主人公みたい。大藪春彦の小説の主人公みたい。顔にアザがあるとか、芦屋のお嬢様と喧伝しているが実情は裕福でないとか、カイロ大学首席で卒業しアラビア語ぺらぺらの才女というメディアが喜ぶような物語を用意して、メディアを使ってなりあがっていくとか、従弟というよく素性のわからない若い男が参謀についてるとか、もうね、今すぐ映画化できるんじゃないかこれ、みたいな。悪人成り上がりドラマですよ。よくある貧しい家に生まれて世の中を呪い、他人を食い物にして成りあがっていく主人公の生き様を描くドラマみたいな調子なんすよ。出世して権力の座について、邪魔者を粛正していくとかね。わかりやすいピカレスクロマンとして、小池百合子の今までの生き方がまとめられている。小説「小池百合子」著者松本清張って言われても違和感ないんじゃないかみたいな。いやあ、悪のヒーロー小池百合子ですね。ひどいことエピソードが逆に小池百合子のカリスマ性を高めてたなあ。まったく興味ないことには、冷徹な態度をとる。陳情にきてる人の話を、マニュキア塗りながら顔も見ずに聞いて、マニキュア塗り終わったから帰ってと言い捨てるとか。こういうエピソード山ほどあるんだろうなあ。事実かどうかはさておいて小説としてはおもしろかったですね。カイロ大学を卒業したのかしてないのかの経歴詐称の件もどっちなのかわかんないっすよね。卒業証書が本物じゃないとか、カイロ大学は卒業したというけど、記録は見せてくれない。それは日本のODAとかあるから小池百合子との関係を継続したほうが利益があるからほんとうのこと言わないとか、なんだか陰謀論みたいなにおいもして、面白すぎる。カイロ時代にルームシェアしてた女性が、過去を告発する自分の命を小池百合子が狙ってくるんじゃないかと身の危険を感じてるとか、ほんと松本清張の世界だもんなあ。
まあ、出世して権力の座につきたい人は、小池百合子さんの生き方がすごく参考になりそう。権力者に取り入って気に入られて上にあげてもらう。小池さんは政治の世界で出世していきましたけども、芸能界も同じような気がしたなあ。女性芸能タレントで売れる人ってだいたいこういうパターンですよね。名誉おじさんになって売れていく。その世界を牛耳ってるおじさんたちに可愛がられて、仲間として認められて出世していく。若い娘なのに、おじさんたちのセクハラパワハラのノリに違和感なく同調できる人が、おじさんたちの仲間として認められて出世していく。権力者に、あいつはなかなかできるやつだと思わせることが重要なんだなあ。そして世話になった権力者も、用済みになれば敵として叩いてまた別の権力者へ渡っていく。そこなんだなあ。凡人は、出世するために自分のスキルをあげるとか、人に真似できない特技を身に着けるとか、自分の能力をどうにかしようと考える。ほんとうに出世していく人は、そうじゃなくて他人にのっかって、乗り換えていって出世していくもんなんだな。恩義とか仁義とかも考えちゃう人は大出世はしないってことですよねえ。そこらへんドライに、お世話になっても必要なくなったら敵だと攻撃するぐらいやらないと、世の中で上には行けないんだな。バンクシーのネズミと一緒に写真撮ってアップしてたけど、あれですよねえ。権威や権力者のとなりにいて一緒に画面におさまって、自分を権力者と同格の人間に思わせる手法。これを自然にやれるかどうか。なかなかできないですよ、平凡な感覚では。そんなことしたら恥ずかしいとか、偽ってるのがばれたらどうしようとか、凡人は考えちゃう。出世できるやつは、そんなことそうなったときにその場をどうにか繕えばいいって考える。その差はでかい。
DMM電子書籍:女帝 小池百合子

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