アクション映画ではないよ
これはなかなか面白かったですね。アーノルド・シュワルツェネッガー主演のシリアスドラマ。エリオット・レスター監督、スクート・マクネイリー、マギー・グレイス、ハンナ・ウェア、グレン・モーシャワー出演、2016年の作品。
アーノルド主演なので、アクション映画かと思っちゃうんだけど、全然そんなんじゃなくて、シリアスなサスペンスドラマでした。サスペンスっていうか、実際の飛行機事故をもとにしたストーリー。シュワが演じるのは、建設現場で働く普通の男です。妊娠した娘と奥さんが久しぶりに家に帰ってくる。空港に迎えに行ったら、その飛行機が空中衝突して墜落したと知らされる。飛行機事故で、妻と娘をいっぺんに亡くしてしまった男をシュワルツェネッガーが演じる。この映画には主役がもう一人いて、それは航空管制官のスクート・マクネイリーです。レーダーを見て、パイロットと交信しながら、飛行機の高度や進路をさばく仕事。二人で行う業務を一人で行っていたことや、メンテナンスがはいって電話が通じないなどのミスが何個も重なって、スクート・マクネイリーは、二機の飛行機が接近していって同じ高度になってることに気がつかず、事故を引き起こしてしまう。それで自分のミスのせいで大勢の人が死んだということに、精神が耐え切れず苦悩の日々です。嫁と息子とも関係がギクシャクしてくる。事故で最愛の人間を失って苦悩する人間と、事故を引き越してしまったことに苦悩する人間を描いていって、その二人が最後でクロスするという展開。前半、中盤の事故が起きてからの二人の苦しみの描写がよくできてて、なんかすごく臨場感がありましたね。シュワちゃんの素朴なおじさん演技もなかなかよかったし、スクート・マクネイリーの神経がたかぶっちゃって、眠れなくなって、精神がおかしくなってる感じもうまくて、話に引き込まれて行きました。
実話をもとにした創作
実際の飛行機事故「ユーバーリンゲン空中衝突事故」がこの映画のもとになってる。てっきり事故だけが本当にあったことで、後半のシュワルツェネッガーがやったことは、映画の創作なのかなって思ってたんすけど、実際におきてることでびっくりしました。あんな仇討事件がほんとうにあったとは、驚きです。一番最後の、息子が仇討に来たところが、映画のつけたした部分なのかな。アーノルド・シュワルツェネッガーは、飛行機事故に関与した人たちに罪を認めて謝ってほしかった。飛行機会社も管制官も誰も謝罪の言葉がないことに、静かに憤ってる。事故で娘や妻を失ったことに、納得がつかないままで苦しんでるんすよ。航空会社は弁護士よこして補償をこんだけするから、さっさとサインしろ、お金がはいるからいいだろみたいな感じで、事務的に処理してくる。事故がおきたことの謝罪もない。スクート・マクネイリーは、名前もかえて、仕事も住む場所もかえて新たな人生をスタートさせていて、事故のことを忘れて立ち直ろうとしていた。シュワはスクートの居場所を新聞記者に聞いて突き止める。この記者は、なんでこんなことしてんすか。危ないことになるって思わなかったんすかねえ。シュワは彼に妻と娘の写真を見せて、謝罪してもらう、取り返しのつかないことをしてすまないという言葉が聞ければ、ふんぎりがついて先に進めると思って会いに行くわけ。いきなりピンポーンって行くんすよ。予想外の展開と結末
それでドア開けたスクート・マクネイリーにいきなり写真をつきつけて、謝るんだって迫る。スクート・マクネイリーは精神を病んでて、まだまだ立ち直ってないんすよ。そんなときにこんな急にショックなことがおきたら、冷静に対応なんかできない。取り乱して帰ってくれっていうだけしかできないわけです。それでシュワはぷちんと切れちゃって、ナイフで彼を刺し殺してしまいます。えー!みたいな。もとになった飛行機事故の詳細も、映画のストーリーもよく知らなくて見てたから、この展開には驚いたなあ。てっきり、対話があり、最後は和解があるのかなみたいなのを想像していたから、こういうことになるとは予想できなかった。あの本書いてる記者が仲介者になって、どっか落ち着いた場所で対面してみたいなことになりそうな雰囲気あったんすけどね。シュワちゃんも表向きは落ち着いて冷静に見えたのに、あっさり凶行におよんでしまってびっくりです。
非を認めることで避けられる負の連鎖がある
それで服役したシュワが10年後、出所して墓参りに行くと、変な青年がいて、その青年はシュワが殺したスクート・マクネイリーの息子で、父親の仇討をしようと銃をむけるわけ。この最後の展開が映画独自の部分なんだろね。息子は撃つ直前までいくんだけど、シュワの間違ったことをして後悔してるという謝罪の言葉を聞いて復讐を思いとどまります。この映画で言いたかったのは、たったひとつの小さな言葉、なんでもないような謝罪の言葉が、あるだけで人間、救われることがあるっていうことなんですかね。逆に言葉ひとつ足りないだけで、命を失うほどの大ごとになることもあるっていうね。言葉の大切さ、影響力の大きさの物語。実際、謝罪の言葉って大事かもしれないっすね。土下座謝罪でその場が丸く収まるみたいなことが昔からあるし。何も解決しない、何も責任とれてない、それでも土下座して号泣して謝罪の言葉を伝えられると、それで気がすんで気持ちの区切りがつくっていうことが、実際あるから。
動画:アフターマス