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『偽れる盛装』を観たんだ【映画】

京都花街を舞台にした女の生き様ドラマ

京マチ子主演の祇園芸子もの。
吉村公三郎監督、新藤兼人脚本、伊福部昭音楽。
1951年のモノクロ大映映画。
人情メロドラマですかねえ。
置屋、芸妓の世界は、
男と女の大人のお遊び、
粋な男女のやり取りの世界に
表向き見えるが、
裏ではドロドロした世界が広がっている。
それが題名になってんだね。
偽りの華やかさ。
そこで生きていくしかない女の寂しさっていうかね。
3世代の女の生き方が描かれます。

三者三様、女の生き方

京マチ子の母親の生き方。
京マチ子の生き方。
京マチ子の妹の生き方。
母は昔ながらの義理人情の世界で生きてる。
日陰の女っていうかね。
愛人としての生き方。
正妻にはなれず、女手ひとつで娘二人を育ててきた。
落ちぶれた男が金の無心にくると
自分の家を抵当にいれてお金を都合つけてあげる。
とうに縁切りされてる昔の旦那の息子に
お金貸してあげるんすよ。
借金背負って20万円の返済が迫ってくる。
京マチ子はそういうのが
我慢できない。
縁を切ったのはそっちなのに
頼ってくるのはおかしいし、
それにこたえる母親もおかしいと。
京マチ子は母親と同じ芸妓の世界にはいってるけど
もっとドライな考えなんすよ。
母親が男たちにいいように利用されてるだけに
見えてしまう。
男が女を買うのが置屋の世界なら
高く買ってくれる男を捕まえたろっていうことで
懐具合のさみしい男を捨てて
金持ってる男をつかまえてお金を用意してもらう。
京マチ子の妹は観光課につとめる堅気の娘。
同僚の小林桂樹といい感じになってるけど
結婚を小林桂樹の親から反対される。
小林桂樹の家も置屋なんすけど
うちとそっちでは家柄の格が違うといわれちゃう。
芸妓じゃないんだけど
京都にいる限り置屋の娘というのがつきまとう。
それで思い切って東京へ行って新しい生活を始める。
女三世代、いろいろ生き方ありますね。

せまい村社会で生き残る処世術

京マチ子は金の無心にきた男を
こてんぱんに袖にして
逆恨みされて刺される。
母親が金の無心にきた男に
自宅を抵当にいれてまでお金を用意するのは
人情に厚いからと思っていたけども、
自己防衛の面もあるんだなって思ったね。
村社会で生き残っていくための知恵っていうかね。
せまい京都の中で人付き合いして
生きていくうえでの知恵っていうかね。
追い詰められて頼ってきた男は
逆上して何するかわかったもんじゃない。
京マチ子みたいに正論で
相手を打ち負かしてもいいことあれへんから
無理してでも相手の顔をたてようとする。
それがせまい世界で生きていくうえでの
処世術っていうかね。
苦しいときはお互い様の精神で
やっていくのが長い目で見たら
損のようで得じゃないのかなっていう生き方。
京マチ子はそういうのはいややと思ってるけど
京都を離れて違う生き方を考えられない。
妹みたいに思い切って東京という
別世界でやっていこうという気になるほど若くない。
母親みたいに男に義理立てして
生きるつもりはさらさらないけども
男からお金をしぼりとるだけしぼりとって
芸妓としてのぼっていくだけの
人生もどうなんかなみたいな。
母親みたいにはなれそうもないし、
妹みたいにもなれない京マチ子の黄昏人生みたいな。
芸妓としては人気絶頂、
言い寄ってくる男は数知れずなんだけど
満たされないこの感じみたいな。
いろいろと生き方とか
世間とか考えちゃう話だったけど
着物姿の京マチ子の小粋な姿がとにかくいい。
それ見てるだけで間が持っちゃう映画でした。

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