高校の弱小バスケットチームを立て直すスポ根もの映画みたいに見えますが、スポーツ映画とは違いました。弱小バスケチームなんだけど、サミュエル・L・ジャクソンがコーチに就任してからすぐに常勝チームに変身します。
走り込みと筋トレ、基礎連を死ぬほどやるだけで、チームは常勝軍団に。バスケットのほうで成功していくのはとくにドラマチックには描かれてないし、この映画のメインじゃない。メインは生徒たちの置かれた状況と、それを打破するにはバスケ以外のところで頑張らないといけないという部分です。
コーチに就任して最初に生徒たちと契約書をかわす。内容は成績はC以上をとること、授業に全部出席すること、試合の日はネクタイジャケット着用することなど。バスケと同じに、学生としてもちゃんとしろっていう契約。
バスケだけやってりゃいいんだ、俺たちゃバスケうまいしって思って学業を適当にやってた選手たちは戸惑う。というのも、その高校は治安の良くない町にあって、卒業できるのは50%以下の生徒でさらに大学進学するのは数%しかいないという学校。
高校を出て刑務所に入るやつも珍しくなく、犯罪事件で殺されるやつも珍しくないという状況なんす。どうせ卒業したら、ろくなことないと思い込んでる。生徒も校長も親たちも。
じゃあ、この状況から抜け出すにはどういう方法があるのか。それがコーチの契約なんですね。一定以上の成績をおさめて出席日数もちゃんとしてバスケも勝つと、大学に奨学金で入学できる可能性が高まる。
大学に進める道があるのに、なぜそこにチャレンジしないのかということなんです。犯罪に手を染めていく人生、犯罪に巻き込まれて殺されるような人生が、若者たちにとっていい未来なわけない。
バスケコーチなんだけど、人生のコーチとしてサミュエルは選手たちに接する。これほんと重要だなあと思ってね。子供の頃にちゃんとこういうこと言ってくれる大人って意外と少ないです。
先生や親は生徒や子供の進路について情報を集めたりどんな道があるかなんて意外と考えてくれません。先生は何十人も生徒がいるから一人ひとりのこと細かにかんがえることなんてできないし、親は親でその日の生活に追われてるから、子供の先のことまで見据えてなにかするなんて余裕なし。
導いてくれる大人って全然周囲にいなかったなあと、自分の子供時代を思い返すと。校長先生がたびたびコーチの方針とぶつかって口論になってて、あの子たちは今が一番輝ける時間なんだからバスケやらせなさいって言ってたのがちょっと怖かったですね。
高校時代の部活動の時間が人生において一番の輝ける時間になるって、美しい青春の1ページって感じのようだけど、高校を出てから何十年もある人生のピークがここって恐ろしくないですか。
ろくな未来が待ってないというのを当然に思う諦めの境地にいて何もしない大人。そうじゃないんだと、戦ってなにかを掴み取れる可能性があるんだと、道をしめしてくれる大人。
どっちのタイプの大人に囲まれて育ったかで若者の未来が大きく変わる。