廓育ち
廓から抜け出すには人殺しでもしないと抜けられない。
廓から抜け出してもまた別の廓へ。
人間はずっと囚われの身のまま生きていくのかみたいな。
美しいですねえ。
気が張り詰めたきりりとした美しさがあります。
プライベートのニュースでいろいろごたごたがあった人っていう
イメージだけど、
女優としてすごいんだからどうでもいいんじゃないのって思えます。
女優は映画の中で輝いていれば、
実生活がどうであろうがどうでもいいんじゃないかな。
佐藤純彌監督、三田佳子、梅宮辰夫、三益愛子、佐々木愛出演。
京都のお茶屋を舞台にした女の生き様ドラマですね。
三田佳子はお茶屋育ちの女を演じてます。
芸妓だった母親に捨てられお茶屋の女主人にひきとられて育った。
普通の堅気の生き方をしたいと願ってる女です。
普通の高校に通って、医学生の梅宮辰夫と交際。
ゆくゆくは梅宮辰夫と結婚したいと思ってるんだけど
そうはうまくはいかない。
廓の中と外の堅気の世界には大きな壁がある。
夜の帝王、梅宮辰夫が真面目な医学生の役というのが
なんかおかしいと思っちゃうけど
なかなかいいんですよ。
実際は不良っぽい人が真面目な役をやるといい味でますよね。
逆もいい味でるんだよなあ。
普段大真面目な人が悪い役するといい味でる。
梅宮辰夫は、三田佳子がお茶屋の人間であることは関係ない、
そんなのは大したことじゃない時代だっていう男で
三田佳子に惚れて結婚しようと言ってくれてるんだけど、
周囲はそういうわけにはいきません。
二人の仲を裂くようにしむけられ二人は疎遠になっていく。
梅宮辰夫との仲をつぶされ、高校も行けなくなり、
お茶屋の人間としてやっていくしかない。
抜け出したいと思いながらも、
ずぶずぶと廓の中に沈んでいく。
義理のある義母も死に、障害をもってる妹分も結婚して出ていき、
やっと重荷から解放されたときには
すでに廓の女としての生き方しかできない状態に。
飛び出していく若さもない。
一緒に行こうといってくれる男もいない。
こんなはずじゃなかった感に打ちひしがれる。
これはどんな人にも当てはまる普遍性のあるドラマですね。
どうにかしたい、このままじゃいけない、
違う世界に飛びだしたいと思いつつ、
日々の細々とした義理や人情に縛られて身動きとれなくなって
時間だけがすぎていく。
そして気がついたときには、もう遅いと感じると。
三田佳子は、そこから大ボスを殺して殺人犯となり廓を出ていく。
晴れやかな顔してるのが印象的ですね。
ああ、やっとここから出ることができるっていう
ほっとした顔なんでしょうか。
でもさ、殺人なので堅気じゃなくなってるわけで。
これまでどこまでもお茶屋の人間だというのがついてまわって
三田佳子の生きる道を妨害してきたのが
今度は殺人をおかした人間というのがついてまわることになる。
どこまでいっても人間は自由にはなれないと思って
なんとも苦しいラストでした。
見どころはなんといっても三田佳子の美しさです。