破局/遠野遥
毛量がすごくて羨ましい。
「破局」をAudibleで聞く
いやあ、久しぶりに芥川賞っぽい小説を読みました。
本の帯に作者の遠野遥さんの写真がでかでかとのっているんすけど、
髪の毛の量が多くてすごい。
どふさで羨ましいなあみたいな。
小説のほうはどうかというと、
芥川賞っぽいって感じです。
若者、セックスと虚無。
若者の抱えるぼんやりとした達観というか虚無というか。
内容はどうでもいい、
いや、ストーリーや登場人物がどうとかいうより、
文章がおもしろいかどうかっていうのがありますね。
文体っていうんすか。
文学って話どうこうじゃなくて文体がおもしろいかどうか。
そこが重要だと思うんすよ。
この破局は文体がおもしろいです。
主人公が不気味に思えるという感想がたくさんありますが、
確かに不気味に感じるけど、
作者はそういう意図はまったくないと対談動画で語ってました。
主人公を気味の悪いやつだと思って書いていたわけではないのに
そういう印象を持たれたのがおもしろいと。
主人公が血の通ってない不気味な存在に思えてしまう。
そういう文体で書かれている。
そこがおもしろいところです。
夏目漱石を参考にしたという話もどっかでみかけました。
そう言われると確かに夏目漱石っぽいです。
「三四郎」「それから」とかと似てるような気がします。
ストーリーや内容がどうこうというより
乾いた感じの虚無を思わせる文体で綴られているところがおもしろいところ。
まあ、なんかほんと芥川賞っぽくてよかったですね。
よく、芥川賞だから手にとって読んでみたけども、
全然おもしろくないじゃないかって思っちゃう人がいるけども、
それは間違ってない。
エンタメとしてのおもしろさは芥川賞受賞作品にはない。
これまでエンタメ要素が強くて、文学としてじゃなくて
楽しめるような作品が芥川賞でありましたかね。
ないような。
ストーリーとしてのおもしろさ、
次の展開を期待させて読ませるおもしろさ、
そういうのとは違うおもしろさが芥川賞なんじゃないですかね。
文体、文章、語り口。
そこに何かしらの違和感や引っ掛かり、フックがある小説が
芥川賞に選ばれている。
文学っていうのは、そこが重要なんだな。
破局も登場人物や起きてる出来事はありふれたどうということないもの。
大学生のラグビー、筋トレ、恋愛、セックス。
これだけ見るとなんだか石原慎太郎の小説みたいだ。
それが文体の力で、主人公はサイコパスなんじゃないか、
ゾンビなんじゃないか、不気味なやつだなんていう印象を
読み手に抱かせる。
その文章の力。
それが芥川賞受賞作品を楽しむべきポイントです。