櫂
五社英雄監督の宮尾登美子原作もの。
無料動画のGYAO!でやってたので見てみました。
女の意地の物語でしたなあ。
男の好き勝手に逆らう生き方を選んだ女。
何もかも失って辛い道なんだけど、意地ですよねえ。
好き勝手する男を緒形拳が演じてて、
それに翻弄されながらも逆らう女を十朱幸代が演じてます。
緒形拳は女衒。
女癖が悪くて奥さんの十朱幸代以外に女をしょっちゅう作る。
気まぐれで10円で子供ひろってきて
今日からうちの子じゃとかいう男。
世話するのは十朱幸代で、面倒なことは女房に丸投げタイプの男です。
稼ぎがよくても、使うのも多いので十朱幸代はやりくりが大変。
女衒みたいな裏稼業の奥さんなんだから、
そんなことは気にせずどしっとかまえて男をもり立てるのが
当たり前だと言われるんだけど、十朱幸代はそういう女にはなれない。
男のわがままを飲み込んで、家を守るのが女の務めという世界。
だんだんと緒形拳の後始末をやらされるのが嫌になってくる。
娘義太夫に産ませた子供を引き取って育てろと言われて
十朱幸代は発狂です。
なんでここまでこけにされなければいけないのかと。
男の好き勝手の後始末を自分がやらされるのかと。
最初、赤ん坊を拒否してたけど、
情がうつって本当のわが子のように可愛がるんすけどね。
この娘を演じてるのが高橋かおりでした。
どっかで見たことある顔だなあって思ったら、高橋かおりだった。
こんな小さいときから子役やってたんですね。
息子が賭場の揉め事で死んだり、服役したりもあります。
子宮筋腫で大病を患ったりもします。
緒形拳は女衒からのしあがって興行主として大きくなっていく。
その裏で十朱幸代はどんどんすり減っていく。
十朱幸代は高橋かおりをつれて家を出て極貧生活です。
最後、緒形拳は離縁して高橋かおりもこっちで引き取るってなる。
それで十朱幸代が泣きついてきて詫びを入れると思ってんだけど、
十朱幸代はなんも言わずに去っていくのです。
それで緒形拳は荒れる。
木刀をふりまわして壁にかけてあった額にかざった写真とかを
ボコボコに壊しまくる。
自分の思い通りにならない女がいることへのいらだち。
自分から歩み寄れない苛立ち。
十朱幸代を愛していたはずなのに、
どうにもならないことへの悲しみ苛立ちでしょうか。
でっかいことやる男は女に頭下げたりしないという
男の意地が邪魔をする。
そんな感じなんでしょうか。
十朱幸代は女衒の女房なのに真面目すぎるような気もしました。
どういう生まれの女だったか描写がありましたかね?
覚えてないけど、どこで緒形拳の知り合って一緒になったんだろ。
緒形拳のほうはバリバリの女たらしで
上昇志向のあるヤクザな男なんすよ。
貧乏は敵!女と情をお金にかえてのしあがろうとする緒形拳。
貧乏でも情のある普通の生活が良いと思う十朱幸代。
二人の良しとする生き方にずれがありすぎる。
起きるべくして起きた不幸という気がしました。
でもまあ、面白かったです。
五社英雄監督の女衒もののなかではけっこう上位になるんじゃないですかね。
女が啖呵を切るとか、髪の毛ひっつかんで争うとか
そういう派手さはないんすけど、
緒形拳と十朱幸代の関係が主軸としてしっかりあって
そこにいろんな女たちのエピソードがのっていくっていう感じの構造だったから
ドラマとして見やすかったです。
名取裕子、石原真理子、真行寺君枝、白都真理らの演技もよかった。
十朱幸代の疲れ切った演技も、ほんと辛くてねえ。
そういや島田紳助が出演してました。
市場のあんちゃん役で、石原真理子とやりとりしてました。
石原真理子も自然な感じでこれもいいんすよ。
ケレン味はないけど、普通にドラマとしての完成度は高い映画でした。
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