夜汽車
宮尾登美子原作の女の情念ドラマ。無料動画のGYAO!でやってたので見てみました。ショーケンが出てるのが目にとまって、どんなだか見ようと思って。1987年の東映映画。主演は十朱幸代です。ほかには秋吉久美子、萩原健一、丹波哲郎、萬田久子、白都真理、新藤恵美、津川雅彦、水野久美、遠藤太津朗、小林稔侍が出演。
宮尾登美子原作映画といえば、五社英雄監督作品が思い浮かぶけど、これは山下耕作監督作品です。やっぱ監督が違うと雰囲気違いますね。
女と男のドロドロした情念ドラマなんすけど、描き方が五社英雄監督のほうが濃くてわかりやすいような気がします。
女同士、髪の毛引っ張りあって喧嘩するシーンとかも、五社英雄監督作品のほうが激しくてわかりやすい。
この夜汽車でも女と女がもめるシーンはあるんだけど、あんまり激しくはないんすよねえ。なんか中途半端というか、体ごとぶつかり合う気迫みたいな盛り上がりに欠けるというか。
お話は宮尾登美子といえばの売られた女とその周辺のヤクザな男たちの話。十朱幸代と秋吉久美子姉妹の話なんすけど、いまいちこの姉妹の話になってないというか。
どっちかというと姉妹どんぶりした萩原健一の最低男物語になってるような気がします。主演ショーケンじゃないのかなみたいな。
五社英雄監督の遊郭ものとなんか違うなって思ったのは、五社英雄は女が主体の話なんだな。この夜汽車は女が主役というより、男のほうが主役で男なしでは生きられない女の性ってな感じで描いてるから、いまいち熱くなれないんだろなあ。
ショーケンが主役みたいに時間とっちゃってるもんなあ。あと殺し屋の小林稔侍も出番は少ないのに、印象に残るいい演技しててかっこよく撮れてるし。
十朱幸代も秋吉久美子もヌードシーンはあるのだけど、これもなんか控えめなんだよなあ。女をかっこよく撮ろうっていう感じじゃない。
やってることはすごいんだよ。十朱幸代なんか最後一人で悪玉のところに乗り込んでいって、指つめてけじめつけて秋吉久美子を取り戻す。
激しいんすけどね。秋吉久美子が肺病でその治療費のために借金して、芸妓で日本全国をあちこち回って働いて借金返済に追われる十朱幸代。萩原健一と付き合ってたんすけど、ショーケンが服役して疎遠になってて、秋吉久美子とも疎遠になって、その間にショーケンが秋吉久美子に手をだしていい仲になってた。
十朱幸代が借金もひと段落ついてやっと妹のとこに行けるって帰ってきたら、秋吉久美子とショーケンができてる。それで3人顔あわせて修羅場になるんだけど、あっさりとしたもんですよ。
もっとなんかさ、もめるのかと思ったらそんなもめない。十朱幸代が怒ってさっさと出ていくだけです。なんかショーケンをボコるとか、
秋吉久美子とわめきちらしながらくんずほぐれつ喧嘩するとかさ、そういうの期待するんだけど、ああ、聴きたくない聞きたくないってとりみだした十朱幸代が秋吉久美子ビンタして去っていくだけなんだもんなあ。
女たちの感情の爆発シーンに迫力がないのが、この映画のいまいちなとこだなあ。やっぱショーケンが主役ですよねえ。
情けない男なんすよ。ほんとどうしようもない。真面目ぶってるけど、やってること最低な男。
丹波哲郎が父親でヤクザなんすけど、ショーケンはヤクザが嫌いで跡を継がなかったけど、金に困って父親を頼る。
十朱幸代にベタ惚れだったのに、全国行脚で借金返済に頑張る十朱幸代をあっさり捨てて、妹の秋吉久美子に乗り換える。
丹波哲郎亡き後、跡を継いで曲芸飛行の興行をするために、十朱幸代のパトロンである銀行頭取の津川雅彦を紹介してもらう。
いやー、最低すぎて笑っちゃうっていうかね。やってることが、人の気持ちを踏みにじるような最低なことなのに、演じてるショーケンはまっすぐで正直者みたいな役作りしてるもんだから、違和感がすごいんだよなあ。
もっとなんかさ、女の情につけこむ男のずるさが感じられる役作りしてくれてたら、ショーケンに振り回される十朱幸代や秋吉久美子が引き立ったと思うんすけどね。
まあ、夜汽車っていうだけあって、SLですかね、機関車が走る映像がけっこうたくさんでてきてましたね。
そんな感じかなあ。女優陣たちの頑張りが実らず、ショーケンのダメ男ぶりがよかった映画ですね。
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