お話は地味です。ベトナム戦争で多くの兵士を救い勇敢に戦って戦死した空軍の衛生兵ピッツェンバーガーに最高の勲章である名誉勲章を授与してくれという申請が30年間続いていた。
敵の待ち伏せで壊滅的な状態の歩兵のとこに、ヘリコプターで援護に来た空軍の衛生兵が自分も地上におりて救援活動をし、多くの負傷兵をヘリに収容させて、自分は地上に残って戦って戦死した。
彼の行為は最高の名誉勲章に値するから授与をという申請がずっと続いてるってわけ。
国防省の職員である主人公のセバスチャン・スタンは、叙勲の請願が却下され続けていることを調査する仕事がまわってきて、仕方なくお決まりの調査だけするつもりだった。
なんかもう3ヶ月ぐらいで、別のとこに異動することになってるから、やる気はあまりありません。エリートで出世街道をすすんでいるやつ。今更30年も前のことだし、確かにその兵士の行動は名誉勲章に値すると思うのだが、彼一人が英雄というわけではないし、ということで軽い気持ちで調査開始です。
関係者に会って証言をとっていく。叙勲には新証言や当時の指揮の記録などが必要ってことで。
その作戦で戦っていて自分も負傷したサミュエル・L・ジャクソン。空軍兵でヘリコプターにのっていたウィリアム・ハート。父親のクリストファー・プラマー。エド・ハリス、ピーター・フォンダとかに話をきいて回る。
あの作戦で何があったのかというのが、じょじょに明らかになっていく。別にほんとは英雄じゃなかったとかそういうことではないです。
邦題の知られざる英雄の真実っていうのはミスリードですね。
サミュエル・L・ジャクソンは自分のミスで砲撃の座標を間違えて味方が誤爆されたことで状況が悪くなって、救援のヘリコプターが呼ばれた。
自分がミスしなければヘリは呼ばれず、やつは死ななくて済んだかもしれない。自分が生き残ったことに後ろめたさを感じ続けている。
ウィリアム・ハートも、自分が地上に降りなくて助かってよかったと思ってることに後ろめたさを感じ続けている。自分のほうが死ぬべきだったんじゃないかと苦しみ続けている。
あのとき戦場にいて、生き残った兵士たちの証言をきくうちに、セバスチャン・スタンは、これを適当にほっておくことはできないと思い始めます。
調査していくうちに、ベトナム戦争は終わった戦争ではない、まだ生々しい傷跡をいろんなところで残しているということがわかっていく。
申請がなぜ却下されているのかもわかっていきます。
その作戦を指揮していた人間が今、政界の大物になってて、叙勲でその作戦の失敗が記録されてしまうとキャリアの汚点になってしまうので申請が却下されていたらしいとわかります。
指揮の記録も隠されていた。
待ち伏せがあるところに、歩兵を突っ込ませるという危険すぎる囮作戦だったし、砲撃の誤爆もあったので、隠しておきたいってことらしい。
まあでもなんやかんやと主人公たちが動いて、最後には大統領令が発動されて勲章が授与されることになります。
授与式のシーンがよかったなあ。
なんか涙出てきちゃう。長官が演説で、出席者に呼びかけるんです。ピッツェンバーガーに救われた同僚だった人立ってください。ベトナム戦争に従軍した人たちも、その家族親類の人たちも、彼の行為に何かしら心を動かされた人たちもって
そう呼びかけていくと、会場にいる全員が立つことになる。一人の人間は小さい存在かもしれないけど、ここまでできる力があるのですって演説をしめくくる。
いやー、これが勲章の意味か。
一人の英雄を称えるためだけではない。英雄にかかわったすべての人々が、報われたと感じ、少しでも癒やしをえることができたり、納得したりできる。
そのために勲章があるんだっていうね。勲章の意味を知る映画でした。まあ、それじゃあ地味だからっていうことで、英雄の真実とか邦題つけてミステリーを強調したんだろうけど、そういうのじゃないからなあ。
前半、中盤とけっこうだるいんだけど、最後がよかったので全て良しみたいな感じかな。でも、戦争がなければ勲章で心を癒やす必要もないわけなので、勲章なんかない世の中のほうが平和でいいのかも。