時代は1970年代。かつてはロデオのスターだったが、今や家族とも死に別れ仕事も失った孤独な老人のクリント・イーストウッド。恩義のある元雇い主から、メキシコの元妻のところにいる息子を連れ戻す仕事を頼まれる。
それでクリント・イーストウッドがメキシコに行ってその息子と会って連れ帰るんだけど、元妻の邪魔が入ってなかなか戻れず道草食ってるあいだに、その子と交流があるっていうドラマを描く感じです。
ロードムービー。追手はいるけど、クリントがすげえ老人なので、さすがに激しいアクションはないです。1発ぶん殴ったりはしてたけど、基本、ノー暴力。敵も老人なので遠慮してたのかな。
メキシコ行って息子をまず見つけるの大変そうだなと思ったんだけど、あっさり見つかります。なんか肩透かしくらったなあ。あれ?けっこう簡単だなって思うところがけっこうあります。
車盗まれてどうすんだってなったけど、すぐに道に放置されてる車を拾って問題なしみたいな。70年代のメキシコって道に自動車落ちてたんだって笑っちゃった。
息子は家を飛び出して闘鶏で生計をたてていた。まあ、母親がいろんな男をとっかえひっかえつれこんで、虐待とかもしてて、それが嫌で家を離れてストリートで暮らしてるらしい。
まあそれで父親が来いって言ってるから一緒に行こうっていうことで、鶏のマッチョと一緒にクリントと出発。
けっこうすぐ戻れるっぽいって思ったけど、こっからなんだかんだと邪魔がはいってなかなか戻れません。
元妻が手下をつかって邪魔してくる。警察とか保安官とかも探してくる。ほとぼりがさめるまでこの村ですごすしかないなって礼拝堂で寝泊まり。
でもすごいのがすぐに仕事も見つかるし、定食屋の女主人がクリントに一目惚れするので飯にも困らない。
仕事は荒馬の調教です。ロデオのスターだったので、馬の扱いには慣れている。どんな馬ともすぐに仲良し。そんなクリントのもとに、うちの動物もみてくれと村の人たちがたくさんやってくる。
おれはドクター・ドリトルかってぼやくクリント。
さすがマッチョマン。どんな難しい環境でも持ち前のマッチョオーラでどうにかなってしまう。
基本的に人誑しの能力がすごいんだよなあ。元妻もクリントに、わたしを抱きなさいって迫ってくるし。いや、無理ないか?って思うけど、クリント映画ではおなじみの展開だ。
「ルーキー」で椅子に縛られたクリント・イーストウッドに敵の女が欲情してまたがってくるみたいなシーンありませんでしたっけ?
こんな状況でも女にモテてしまうのがマッチョ、クリントだみたいな。
マッチョマンは多くを語らずとも、目線ひとつで女と恋に落ちれるというね。
まあ、それで元雇い主が息子をなぜ連れ戻したいのかというと、元妻の名義でやっていた投資の利益を受け取る期限がもうすぐなので、息子を人質にしたら有利に交渉できるからというのがわかる。
虐待する元妻のところから引き取りたいという父親の愛情ではなかった。
騙したね、友達だと思っていたのにと怒る息子だが、クリントもその事実を知ったのはメキシコ来てからなので、おれも騙されてたんだと言ってなんとなくすぐに和解。
クリントと子供のあいだの交流がもうちょっと丁寧に描かれるのかと思ったけど、もっぱらクリントの心情のほうにフォーカスしてて、子供は脇役でしかなかった。
子供と大人が一緒に逃避行というと、クリント・イーストウッド監督、ケビン・コスナー主演の「パーフェクト・ワールド」を思い起こすね。
あれは悲劇的な最後だったっけ?ぜんぜん覚えてないけど。
今回のクライ・マッチョはハッピーエンドです。
無事に子供を送り届ける。クリント・イーストウッドはメキシコにもどって定食屋の女主人のもとにいって、ゆったりとダンスを踊る。
マッチョぶって自分を大きく見せようと暴れてもなんもいいことない。好きな女とおだやかな暮らし。それこそが最上の人生。
90歳をこえたマッチョが失敗をかさねてたどり着いた答え。
味わい深いですが、映画としてはご都合主義に見えるし、盛り上がりにも欠ける、地味ということでおすすめはあんまできないかなあ。
クリント・イーストウッドの映画の歴史を辿ったうえでクライ・マッチョを見るとおもしろさはあります。
マッチョマンの変遷。その流れのなかでたどり着いたのがこの境地という見方ができればおもしろいけど、この映画単体では面白みは少ないです。