よくよく考えたら見たことなかった。ちょうどGYAO!の無料配信でやってたので見てみました。GYAOも3月で終了ということで残念ですね。
それで見始めたんだけど、かなり違った。こうなんだろうなって想像してた脳内プラトーンと実際のプラトーンがかなり違ってました。脳内ではけっこうリアルよりというかドキュメンタリーっぽいドライな感じの作りだと思ってた。
実際は叙情的な湿っぽい劇として作られていた。BGMがすごい悲しげなんですよ、最初から。テーマ曲なんかな。オープニングやエンディング付近で何度か聞こえてくるBGMが、崇高で悲壮感を感じさせる、どこか聖歌ようにも思える悲しげな音なんすよ。
大学を中退して志願して新兵としてベトナムにやってきたチャーリー・シーンの視点から語られるという形式も意外でした。私小説風なんだよなあ、この映画。ベトナム戦争の善悪、戦争の善悪という大きな話ではなく、一人の若者が戦場で何を見てどう変わったかみたいな、個人の話なんです。
それがなんかよかったですね。中身は悲惨でよくないですけどね。ひどい話だよなあ。貧困層や黒人の若者とかだけが、戦場におくられるのはなんか不公平な気がして、大学を中退して志願した若者。
ちょっとのんびりした若者です。それが戦場で過ごすことでどんどん壊れていく話なんだから、なんともやりきれない。それに殺人者になっちゃうんだよ。戦場にいって敵と戦闘するんだから殺人者になるって当たり前だろって思うだろうけど、味方を粛清することにもなるんだ。
もうそれがね。狂ってるって感じです。トム・ベレンジャーとウィレム・デフォーという二人の古参兵がいる。ふたりとも頼れるできる兵士なんすけど、対照的なんすよ。トム・ベレンジャーは戦場を生き延びるごとに人間味がなくなっていって冷酷な人間になっていってる。
ウィレム・デフォーはまだ人間性がある。悲惨なことばっかりの戦場でまだ踏みとどまってる感じです。それで敵ゲリラに協力してるということで農民の村を焼き払って全員処刑しようとしたトム・ベレンジャーをウィレム・デフォーは止めて、軍の上層部に告発する。
あれは犯罪行為だってね。それを恨んでトム・ベレンジャーはウィレム・デフォーを作戦の中のどさくさに紛れて始末するわけ。それに勘づいたチャーリー・シーンは怒ってトム・ベレンジャーを撃つ。もうむちゃくちゃですよ。
ぼんやりしていた世間知らずの若者がベトナム戦争の戦場で敵とやるかやられるかの命のやりとりをしながら、仲間内での醜い犯罪を目撃し、彼自身も同じように手を汚してしまう。ひどい話だ。
チャーリー・シーンがトム・ベレンジャーを撃つんだけど、それもどうにか他にやりようなかったのかって悲しくなっちゃうよ。トム・ベレンジャーがウィレム・デフォーを撃ったのと同じことをチャーリー・シーンがトム・ベレンジャーにやっちゃうんだから。
一見、トム・ベレンジャーが極悪人に思える。ただの農民を殺戮しようとしてるひどいやつだみたいに思えるんだけど、よく考えるとトム・ベレンジャーの行動も無理ないように思ったなあ。
だってあの状況でゲリラと農民の区別をつけるのは難しい。ゲリラ兵に協力してるのかしてないのか。農民なのか、ほんとはゲリラの仲間じゃないのか。もうそんなのあの場所ですぐにわかるわけない。
だからやられる前にやるだけだというトム・ベレンジャーの行動は、あの狂った戦場では正しいことのように思えてしまう。戦争でなければ、疑わしいからやれっていうのは乱暴すぎるロジックだけど、戦場ではそれが正しいように思えてしまう。
単純にトム・ベレンジャーが悪でウィレム・デフォーやチャーリー・シーンが善とは言い切れないのが悲しい。
もうね、悲しいんだよね。最初から最後まで。土煙巻き上がる中に飛行機が着陸して、新兵のチャーリー・シーンたちがベトナムの地に立つオープニングシーン。やってきた新兵といれかわるように、死体袋にいれられた戦死者たちが運ばれる。悲しいBGMがかかってて、もうこの時点でやりきれない気持ちになります。
チャーリー・シーンもウィレム・デフォーもみんな若かったなあ。ジョニー・デップも通訳兵の役でちょっとでてますね。あとはフォレスト・ウィテカーとかもいたなあ。面白いところでは、監督のオリバー・ストーンもカメオ出演してましたね。
爆弾特攻される本部の将校役がどっかでみた顔で、あれ?監督じゃね?って思ってあとでチェックしたらそうだったです。
まあ、いささか古いのは否めないし、リアル系の戦場映画とくらべれば迫力にかける描写が多いしなんだけど、なんかもう悲しいなあっていうムードが全編に漂ってる。それがよかった。見てよかったね。サンキューGYAO。