60年代だっけ。ロスのハリウッドを舞台にして、実在の俳優や実在の俳優をモデルにしたらしきキャラクターが描かれる。レオナルド・ディカプリオは西部劇スターでブラッド・ピットは彼のスタントマン。二人ともすげえ年食ってておじんなんだよ。
すごい貫禄です。デカプーもブラピも貫禄がすごい。ブラピがなぜか上半身裸になったりするのがよくわからなくて奇妙なおかしみがあります。デカプリオは年齢的にキャリアが下り坂に入ってる俳優。
知名度もあって代表作もいろいろあるんだけど、今は若手が台頭してきて2番手の悪役を演じるようになってきてる。それでイタリアでマカロニ・ウエスタンの主演映画やらないかとか話がきてる。これってクリント・イーストウッドがモデルなのかな?
たしかクリント・イーストウッドは中年になってから、イタリアでマカロニ・ウエスタンの主演してから人気がでたっていう話じゃなかったかな。そんな感じの俳優が、セリフを覚えられなくて困ったり、いい演技をしてそれをプロ子役に褒められて嬉し泣きしたりするのを淡々と淡白に描いていきます。
ブラピはデカプのスタントマンなんすけど、デカプリオの身の回りの世話とか運転手とかもやってて、仕事仲間以上友達以上家族みたいな付き合いをやってる。とにかくワイルドなやつです。命知らずの男みたいな。物事は拳で解決みたいな。
多くを語らず、やるときゃきっちりやるよみたいな男。ブルース・リーと揉めて喧嘩するシーンとかあります。講釈たれるブルース・リーに思わず笑ってしまったブラピがブルースと立会をすることになって、思い切りぶっ飛ばす。
ブルース・リーを結構馬鹿にしてるシーンだったけど、タランティーノブルース・リー好きじゃなかったのか。千葉真一派だから、ブルースを茶化したのかなあ。ブルース・リーは格闘家としてほんとうに強かったのか、演技者として見せる武道がうまかっただけなのか、いろいろ意見があるみたいですけどね。
あとブラピが街を運転してて、ヒッチハイクのヒッピー娘を農場に送っていくんだけど、その農場はチャールズ・マンソンファミリーの根城で、なんかあやしいみたいな描写もあります。マンソン・ファミリーがロマン・ポランスキーの家を襲撃して奥さんのシャロン・テートを殺害した事件を描くんすよ。
マーゴット・ロビーが演じるシャロン・テートも出てきます。シャロン・テートって実際あんな感じの人だったのかな?自分がおマヌケな端役で出演した映画を映画館に見に行って、自分のコメディ演技に観客が笑ってるのを聞いて嬉しがるみたいな。
陽気で楽しい人っていう感じに描かれてた。それと気になったのが足。足が汚え。なぜかマーゴット・ロビーやヒッピー娘は足を前の座席の背にのっけて映画を見たり、足を車のダッシュボードに投げ出して座ったりする。
そのとき映る足の裏が真っ黒だったり汚そうだったりで、すげえ汚えの。あの時代のロスは素足で過ごすのが流行ってたのかな?
まあ、そんな感じで、クエンティン・タランティーノ監督が考える、昔のハリウッドはこうだったらいいな、昔のハリウッドの俳優がこうだったらいいな描写がたんたんと続く。日常系ドラマっていうやつかな。
最後、マンソン・ファミリーはポランスキー家じゃなくて隣のデカプリオの家に襲撃に現れます。そしてLSDタバコがきまってるブラピに返り討ちにされる。さらにデカプリオが火炎放射器を使って丸焼きにする。
ブラピがマンソン・ファミリーをぶちのめす描写がエグいです。顔を何度も壁や床にバンバン叩きつける。クエンティン・タランティーノおなじみのいつもの悪ノリ暴力描写。それになんで家に火炎放射器があるんだよみたいな。
過去に火炎放射器でナチスを焼き殺す作品で使ったやつって言ってたけど、なんでそれが家にあってすぐ使えるようにスタンバイされているのかっていうね。バカバカしさ。こういう暴力をバカバカしくグロテスクに描くクエンティン・タランティーノの暴力描写はあんまり好きになれないです。
ただ気持ち悪いって思っちゃうから。
それでマンソン・ファミリーはデカプリオ家にいって反撃されて殺されたので、シャロン・テートは無事でしたっていうエンディングになってます。だからなんなんだ?っていう感じが強い。歴史改変ドラマを日常系ドラマの形で描いたって感じですかね。
一応、デカプリオとブラッド・ピットが主役っぽいんだけど、別に彼らの物語じゃないんすよ。彼らも登場人物の一人でしかない。この映画に主役はいない。こうだったらいいなハリウッド描写が主役。
この話をクリストファー・ノーラン監督が撮ったら、ディカプリオとブラピが時空警察でシャロン・テート事件を阻止しなきゃならなくて、ハリウッドに潜入。七転八倒して事件を阻止みたいなSFっぽい歴史改変サスペンスドラマに作るだろう。
タランティーノ監督は誰かがなにかを頑張ってするみたいな部分にはまったく興味がないみたいで、ただ遠目からこうだったらいいなムードの昔のハリウッドを映像にすることに集中している。
物語映画のように、誰かが困難におちいってそれを解決して、なにか成長が描かれてみたいなストーリーを楽しみたい人にとっては、苦痛でしかない映画だと思う。ただの風景画みたいなもんだから。それにけっこう長いからね。自分はけっこう楽しめたなあ。
雰囲気映画がけっこう好きだから、長くてもとくに意味なくても、なんか画面に流れる空気感が心地よいから見れるみたいな。近年のタランティーノ作品がどれも好きじゃないけど、これはけっこういけたなあ。
ギャグみたいな暴力描写は好きになれないけど、それ以外はなかなかよかったんじゃないすか。でもこれといっておもしろいっていうわけでもなく、これをつまらないと思う人も当然だと思うわけですけども。