山田洋次のマジックですね。劇なんだよね。現実とかリアリティとかじゃなくて、お芝居としてのリアルとか現実とかを見せる手腕がすごいんだろうね。嘘をつくのがうまいっていうかね。自転車どてーっとか今どきそりゃないよみたいなこと平気でやる。
それどうなのみたいなバカなこと平気でやる。キャラクターもステレオタイプというか、いかにもなキャラクター出してくるし、でもそれで劇として成立しちゃうというか、うまくまとめちゃう。そこがすごいです。
なんかすごくない?若いときは山田洋次の映画なんか年寄向けの退屈なやつでしょみたいに思ってて、まじめに見る気にすらならなかったけど、いやはやすごいですよ。山田洋次の演出力、物語力。
テーマは老い。家族はつらいよの1作目を見てなくて2を見たんだけど、全然問題なく見れました。いや、1を見たことあったかな?全然覚えてないや。橋爪功が主人公。定年して老後を過ごしてる男。息子家族と同居。
車の運転があやしくなってて、近頃あちこちこすったりぶつけたりするようになってきてて、家族は免許を返上してほしがってるけど、まだまだ元気で大丈夫のつもりの橋爪功にその気はない。
おれを子供扱いする気かと聞く耳持ちません。まあ、それで長男西村雅彦、長女中嶋朋子、次男の妻夫木聡家族がそろって説得する方法を家族会議で話し合おうとするんだけど、前日、高校時代の友人小林稔侍と深酒して一緒に帰宅。小林稔侍がそのまま亡くなってそれどころではなくなるのだった。
前半は橋爪功のおれはまだ元気だ大丈夫という認識と、もうそろそろ危ないと思ってる子どもたちとの認識のギャップによるドタバタ劇。
なんか高齢あるある、世代間ギャップあるあるみたいなシーンが続きます。これどうなるんだろって見てて着地が見えなくて不安になってくる。
それが後半、行方知れずで連絡もつかなかった高校時代の友人、小林稔侍と偶然再会したところから話は違う方向へ。そして人の縁の有り難さ、人の生と死の結末の話になってグランドフィナーレをむかえる。
始まったときはどうなることやらと思ったけど、終わってみればそれなりに満足感もあるしおもしろかったなみたいな。
いやー、不思議です。山田洋次マジック。三世代出てくるんすよ。定年後の老年期、その子供の成年期、そして孫世代の若者たち。それぞれの世代の描写が、これまた典型的というか、ステレオタイプというかでなんの工夫もないというか。
長男、長女、次男の描き方も、よくまことしやかに言われてる性格で描かれる。父親に似て威勢がいいけど実は小心者な長男、2番目なので兄の影にかくれて思ったことをずけずけいう自由さがある長女、そんな上の二人を見て育つから、平凡な常識者になる末っ子。
そういうよく言われる迷信、ステレオタイプそのまんまの設定です。とくに孫世代の若者の描写なんかどうかと思うもんね。若いやつはゲームだろ、若いやつはピザだろみたいな、いかにもな若者描写をやる。山田洋次映画の若者描写にはいつも違和感を感じてしまう。
違和感あるのにそれで劇としては成立してて、見れちゃうから不思議なもんです。うーん、なんだろ、現代を舞台にしてるはずなのに、小津安二郎の時代の話を見てるような気分になります。
警察コントから飛び出てきたような制服警官と劇団ひとり演じる刑事。いかにも荒くれものっぽいトラックの運転手。嘘っぽい、リアリティがない、バカバカしいよって言ってしまうような描写ばかりだけど、それが不思議におもしろい。
リアリティがないとか、嘘くさいとか言っても、実のところ、観客は嘘を求めているのかもしれない。嘘らしい嘘、もっともらしい嘘をならべて欲しいんだろな、心のどっかで。映画に嘘を求めてる。その期待にまともに応えてくれるから山田洋次の映画はいいのかもしれないなあ。
なんか古臭くてリアリティを感じないけど、劇としては楽しめるみたいな。奇妙におもしろいですね。まあ、若い人が見たら古臭い変な映画としか思えないかもしれないっすね。
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