これはちょっとよくなかったですね。監督は黒沢清で、主役は深津絵里と浅野忠信。なんか期待しちゃう組み合わせだったけど、なんかダメだった。
突然失踪して突然幽霊になって夫が帰ってきて、夫の幽霊と一緒に失踪中をたどっていく旅をするってきくとものすごくおもしろそうなんだけど、映画自体はおもしろくないんですよ。
夫婦の難しい理性でははかれない関係の話を怪談風というかスピリチュアル風の設定でやってるんだけど、なんかぱっとしないんすよねえ。
浅野忠信や深津絵里は、想像どおりというか、浅野忠信な演技と深津絵里な演技をいつもどおりうまくやってました。浅野忠信の演技がちょっと苦手なんすけど、それは声があんまりよくないからだと気がついた。
声というか発声がもごもごしてて聞き取りづらいから、あんまり浅野忠信の演技が好きじゃないんだなって気がついた。雰囲気ある演技するけど、滑舌悪いだけのような気もする。セリフが聞きづらいから苦手だなあ。
深津絵里はなんか怖かった。夫といろいろあって、気持ちの整理もつかない状態で精神が不安定な感じがすごい怖い。
夫が病んでなんも言わずに失踪して探したけど見つからず、3年間宙ぶらりんで生きてきたところに夫が俺死んだからって幽霊になって帰ってくる。
幽霊の浅野忠信は深津絵里以外の人にも見えているし、ご飯を食べたり寝たりして生きている人間とかわらないふるまいをする。深津絵里が狂って見てる幻影というわけではないようです。
そんで失踪中にいた土地を二人でめぐるわけですけども、新聞配達の小松政夫のところと中華料理屋の人のところと農村の柄本明のところに滞在して、そこでもいろいろと心霊な出来事がある。まるで心霊探偵の深津絵里が助手の幽霊浅野忠信と一緒に死んだ人のお悩みを解決してまわる連続ドラマものみたいです。
死んでるのにまだ毎日毎日新聞配達を続ける小松政夫。幼くして死んだ妹とのピアノの思い出で後悔してる料理屋の奥さん。夫の亡霊と農家の嫁の奥貫薫。彼らの死者と生者との関係、後悔と無念などに接して深くかかわっていく浅野忠信と深津絵里。
そんなことやっていくうちに、深津絵里と浅野忠信のほうの関係も終局に向かっていく。夫の浮気相手の蒼井優と対面したりとか、深津絵里のほうで夫が失踪したことについての気持ちの整理がついていくっていう感じですかね。
でね、最後、幽霊の浅野忠信と久しぶりのセックスしてスッキリみたいなことになるんすよ。これどうなんだろみたいな。悶々としていたのがセックスでスッキリってどういうことなんだろみたいな。どういうことだよみたいな。
しかも相手は幽霊。怪談というか怖い話というか笑い話というか奇妙な話ですけども、感動してほしいらしいんすよ。感動のラブシーンみたいに撮ってるんだけど、全然そういう気分になれない。この映画は音楽がいかにもここ感動ですよみたいなくさい感動音楽っぽいのがよく流れます。
音楽はくさい感動をあおる安っぽいものが流れてくるのに、画面は全然そういう感動の映像として作られてないんすよ。映像はむしろ怪談に近い。無感動、フラットな絵作りがされていて、のっぺりとした平板な作りなんすよ。
醒めたそんな映像なのに、音楽だけが、情感たっぷりに感動ストーリーっぽいトーンで作られているので、映像と水と油で全然マッチしてない。俳優の演技もたんたんとしてるし。
感動ストーリーでもないし、怪談でもないし、ホラーでもない。なんでもないものに長時間つきあわされたみたいな。
うーん、黒沢清の絵作りがぜんぜん好きじゃないってことなんだよなあ、結局。なんだろ。なんかのっぺりとした工夫のない映像に感じちゃう。退屈な絵というかなあ。なんか意図があるのかなって思うけど、ただのいまいちな映像に感じちゃう。
ピアノの話のところなんかなんも工夫ないから長くて退屈しちゃった。長々とひとり語りを始める中華料理屋の奥さん。出てきてピアノを弾く妹。長いと感じてしまう。
どうもよくわからない。いまいち退屈するような映像なのになぜか評価は高い。なにかあるんだろな。自分にはわからない魅力が。
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