ドラマを見た時、うわー、こわって思ったのを覚えています。
うまく誘導されるっていうかさ、
自分で考えて自分で選んで行動しているようで、
すべて思い通りに操られてるだけっていう恐怖。
従うことの快感。
そういう恐怖を感じられるお話で印象に残ってたんすよねえ。
それで原作を読んでみました、最近。
世にも奇妙な物語とは細かいとこが違いますね。
短い寓話です。
学校の教室でおきた23分間の出来事。
細かい設定や背景は描かれてないんすけど、
どうも戦争があって敗戦国となった側の学校に、
戦勝国の新任の先生がやってくるという設定のようです。
先生がだんだんと子供たちの心を掌握していくのを描いていく。
子供たちがときどき、疑問やおかしいと感じることを
突っ込むんだけど、うまいことかわして
その批判さえも利用して思い通りに子供たちを誘導していく。
9時に始業してから、9時23分には子供たちの心をとらえることに成功していた。
というお話。
子供たちは私たちで、新任の先生は権力者っていうことですかね。
権力者や支配者に騙されないぞ!と僕らは身構えて
抵抗する気でいるんだけど、
向こうはその抵抗の上をいくやり方で懐柔してくる。
いやー、怖い話ですね。
原題はThe Children's Story。
子供たちのお話っていう感じで寓話的な雰囲気が強い題名。
それを23分間の奇跡という文学的な匂いのする邦題に訳したのは、
どうなのかなって感じしますけど、
23分間の奇跡のほうがキャッチーさは格段に強いので
いいふうに訳したなあって感じします。
青島幸男が訳してるんですね。
さすが元祖マルチタレント。
放送作家としての手腕が発揮された題名だなあ。
この本には英語の原文と作者がこの短編を書くきっかけとなった
娘とのやりとりがあとがきとして収録されています。
6歳の娘が学校から帰ってくると、
こっきにちゅうせいをちかうと
文言をもごもご言って10セントくれと言ってきた。
どうしてと聞くと、先生がこっきにちゅうせいをちかうと
お家にかえったらおとうさんやおかあさんが10セントくれますと言ったからだと。
ちゅうせいをちかう意味を知ってるのかと聞いてみると
娘は言葉の意味もその行為の意味も知らず困ってしまう。
意味もわからないことを人に吹き込む容易さに驚いて
この短編を書こうと思ったということらしいです。
子供だからなんでも簡単に信じて操られるんだと言えないとこが怖い。
大人だって変わらない。