1964年の東映映画。
石井輝男監督、鶴田浩二、高倉健、丹波哲郎、三田佳子、待田京介、八名信夫、大木実出演。
おもしろいですね。
1960年代のゴミゴミした香港の映像がまずおもしろい。
船上生活する人々や九龍城砦のスラム街の中を闊歩する高倉健。
タイガーバームガーデンとかも出てきます。
いかしたジャズをBGMに高倉健が香港の観光地を
とにかく歩きまくる前半。
東京から香港にドラッグの取引のためにやってきたヤクザという設定で
高倉健が香港を練り歩く。
あの時代の香港の空気が興味深く映像に記録されています。
今はもう香港は綺麗になってて
ああいう混沌カオスな雰囲気はなくなってるんじゃないかな。
今もこんな感じなのかな。
香港の異世界ムードがおもしろいところに
出演者もいい感じのがそろってるんすよ。
高倉健は前半で退場、
中盤以降のメインは鶴田浩二です。
高倉健がどうして死んだのか、
取引はまとまったのか、調べて
薬と金の行方を探るのが鶴田浩二。
香港には二つのルートがあって、
一つのほうのボスは丹波哲郎です。
薬の運び屋をやる京劇女優役は三田佳子。
東京ギャングの一員に八名信夫、待田京介。
香港ギャングに大木実など。
みんな若くて生きがいい。
それに香港ギャング側はちゃんと中国語をしゃべるのがいいですね。
日本人が演じてるけど言語が現地の言葉だと
それらしく見えてくるんだから不思議なもんです。
そして後半は舞台を横浜にうつして、
香港ギャングの2勢力と東京ギャングが
金とヤクをめぐって火花を散らす争いをするってわけ。
壮絶な銃撃戦とかあります。
とにかく大人数で撃ちまくるシーンがあって
音とかすごくてけっこう迫力あるんだけど、
昔の映画だけに銃器の描写はそんなにリアルじゃないんすよ。
撃ち方とかね。
撃つたびにバンッバンッって
銃を前に突き出しながら撃ったりするのが、
子供が銀玉鉄砲で遊んでるみたいで
なんか笑えたりします。
もうちょっとなあ、かっこよく撃ってくれたら
すごい迫力あるのになあと、
そこは残念ポイントですね。
鶴田浩二のキャラクター造形はなかなかいいです。
鶴田浩二と丹波哲郎は知り合いだったんすよ。
戦後、鶴田浩二はヤクザになり、
丹波哲郎は香港にわたった。
お国のために兵隊として戦ったのに
戦争が終われば何もなく邪魔者扱い。
それで鶴田浩二はヤクザになった。
しかも薬中にもなってしまってる。
高倉健の遺骨を届けようと妹の家を訪れるんすけど、
妹のあまりにも爽やかな気持ちのいい堅気の生き様を
見せられて自分の汚れ具合が恥ずかしくなって
逃げるように去っていく鶴田浩二。
鶴田浩二は末期的な中毒患者で
クスリが切れると禁断症状でもだえ苦しみます。
仕事のできる冷静な切れ者風だったのに、
実はクスリに頼らなきゃ生きる気力もないような弱い男だったのだ。
そういう男がですね、
健気に明るく生きる人の中に美しさを見出して
そのために最後の戦いをする。
自分のそれまでの生き方にけりをつけるために
ドラッグの取引を壊滅させるわけ。
いやー、なかなかいいじゃないですか、このキャラ設定。
おまけに丹波哲郎は麻薬組織殲滅のために動く
アンダーカバーだったというオチもつきます。
香港の異国情緒も楽しめてなかなかよかったです。