死んだら生きていたときに一番よかった記憶や思い出はなんですかと聞かれる。1週間のうちに、職員が手伝いながら一番大切な思い出を決めて、その思い出の再現をセットを作ったりBGMを流したりして、再体験。その思い出を胸に死者は死後の世界に旅立っていく。
そういう話です。その施設の職員をARATAや谷啓や小田エリカ、寺島進、内藤剛志が演じています。彼らも死者なんすけど、彼らは一番よかった記憶を1週間で選べなかった人たちで、あの世に旅立たずに役所の職員やってるんすよ。
1週間で死者は来て去って、また新しい死者が来てっていれかわっていくので、職員はみんなドライにお仕事としてこなしていく感じなんすけど、ARATAが担当した人にけっこういれこんでるのを小田エリカは奇妙に思い、ちょっといらつく。
小田エリカはARATAが好きなんですね。いい思い出を決められなかったという同じ仲間だし、一緒に仕事して仲良くなってるから、小田エリカはARATAに特別な感情をもってる。それが最近ARATAは仕事にいれこんで様子がおかしい。
まあ、その担当していた人の奥さんが実はARATAの許嫁だった人だったということなんです。ARATAは若くして兵隊に行って戦死してその人とは死に別れ。それがその後結婚した相手がいて、その人の死後の担当が自分になった。
なんというめぐり合わせ。ARATAはその男性の思い出探しを一緒にするうちに、自分にとって一番よかった記憶を見つけることができて、死後の世界に旅立つことになります。
まあ、それで次の1週間がまた始まるわけですけども、抜けたARATAの代わりに、大切な思い出を見つけられなかった伊勢谷友介が新しい職員として働くことになる。伊勢谷友介がいせやっていう役名なのが笑えた。
しかもすごい輩感全開でおもしろいんですよ。そこらへんのチンピラのあんちゃんみたいな感じの演技してて、伊勢谷友介って若い時ってこんな演技してたんだっておもしろかったね。すんごいチンピラあんちゃん演技うまい。演技じゃなかったのかな。
監督は是枝裕和。今じゃカンヌだなんだと賞をいっぱいとって大御所な感じしますけど、この映画でもすでに映画っぽいっていうか、質実剛健な絵作りしてるって感じです。
地味なんだよ。話も映像も。じっくりと腰を据えて、地味な物語をたんたんとやってる。若さのいきった感じとか全然ないです。枯れてるとすら思える落ち着いた映画作り。
冒頭とエンディングに同じシーンをもってきて円環構造にするとか、ラストの小田エリカがノックに答える直前で画面を暗転させて終わる演出とか、ああ、映画してるっていう感じでよいです。
自分が死んでこの施設に連れてこられて、生前の一番大切な記憶や思い出を選んでくれといわれたら、なにを選ぶだろうか。これだって自信もって見つけられないかもしれないですね。
印象的なことがあったとしても、それが一番大切だったかといわれると、そうでもないなっていうことばかりのような気がして選べそうにない。
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