今は新曲をだすこともなく、過去のヒット曲を歌うツアーをやって稼ぐ毎日です。酒、クスリ、退屈なツアー。お金は入ってくるけどミュージシャンとしての喜びもなにもない生活。ビジネスパートナーで親友のクリストファー・プラマーが誕生日にプレゼントしてくれたのがジョン・レノンの手紙。
数十年前にかけだしミュージシャンだったアル・パチーノが雑誌のインタビューで有名になったり大金を稼いだりすることで音楽がスポイルされてしまうことが怖いと話て、その記事を読んだジョン・レノンが手紙を書いて雑誌社におくっていた。
受け取った記者がこれはお宝だぞってことでアル・パチーノに渡さずにコレクターに転売してたのを探し出してプレゼントしてくれたってわけ。アルが音楽の神とあがめていたジョン・レノンから40年をこえて届いた手紙。
手紙の内容は、有名になることや大金を手にすることを恐れる必要はない、音楽をダメにするとしたら君自身だ、相談にのるから電話番号に電話してくれみたいなことが書いてあった。それを読んだアル・パチーノは目覚める。
やり残してることがある。それをやらなきゃと行動を開始する。ジョン・レノンが書いた手紙が数十年後にそのミュージシャンのもとに戻ってきたというのがほんとにあったことらしいですね。そのミュージシャンが大スターになっていたらという部分が映画で作ったところ。
で、アル・パチーノがやり残したことっていうのが、オリジナル曲を作って歌うこと。最初は自分で作って歌ってたけど売れなかった。他人が作った歌を歌って大ヒット。観客は大喜びでいつものあれ歌ってよってなるんだけど、アル・パチーノは自分の曲を歌いたいという気持ちがずっとある。
それでホテルにグランドピアノ持ち込んで、ポロンポロンと曲作り。もうひとつやり残したのが、息子との和解です。酒とドラッグにまみれた狂熱のツアー生活のなかで、関係をもった女性とのあいだにできた子供。結婚もしてないし、父親らしいことをなにもせず、ずっと絶縁状態。
今、息子はもう大人で結婚もしてて子供もいる。そこに突然あらわれて家族らしいことをやって許してもらおうとするってわけ。ジョン・レノンの手紙がきっかけになって、このふたつのことをなしとげようとする老齢のミュージシャンのお話でした。
まあ、どうなんだろ。話はそんなおもしろくもなかったと思う。息子の和解の部分で難病設定をだしてくるのはちょっと仕掛けっぽすぎて興ざめした。恨んで拒絶する息子に強引にいつものペースでねじこんでくるアル・パチーノ。
いつのまにかアルのペースになって息子も根負けで打ち解けてくるところで、実は息子は白血病で抗がん剤がきくかどうかの生命の瀬戸際だったというのが明らかになります。病気設定はいらなかったような気がしたなあ。
自作の新曲をつくるっていうほうは、ホテルの支配人のアネット・ベニングといいコンビでやりあって形になっていくんだけど、お披露目のプライベートライブで観客の反応に怖気づいて新曲をやらずにいつもの大ヒット曲をやってしまう。
結局、やり残したことふたつとも中途半端な結果に終わる。変わろうとしたけど、そんなに簡単に変われるわけじゃない。だけど、変わろうとしていることが大事なんだよっていう感じの着地かな。
役者がいいですね。アル・パチーノも元気だったなあ。しゃべりまくって相手を自分のペースにはめてしまう。みんなアル・パチーノのことを最後には好きになってしまう。歌は本人が歌ってたのかな?あんまりうまくはなかったけど。
クリストファー・プラマーもすげえおじいちゃんだけど達者にやってました。アル・パチーノはどうしようもないやつだけど、いいやつなんだよって息子にピアノを届けるシーンよかったですね。アネット・ベニングもおばあちゃん一歩手前ですがお美しかったです。
40年をこえて届いた手紙。40年はあまりにも長い時間ですね。これをあのとき、若者だったあのときに読んでいたら、すべてが違っていたかもしれない。そういうことってありますね。若いときに知りたかった、わかりたかった。そういう後悔が無数にある。