当時は紛争が激化していて、組織同士の報復合戦みたいな泥沼状態だった。ギャングの抗争みたいなもので、血気盛んな若手がでっかいことやったるぞと深く考えずに殺しをやっちゃう。そんななかで起きたひとつの殺人にフォーカスして描かれたドラマでした。
事件から数十年後に加害者のリーアム・ニーソンと殺された男の弟ジェームズ・ネスビットがテレビ番組の企画で対面することになる。
まず、なんちゅう企画だ!って驚きます。こんな番組作ろうと思うかな?どういう映像を期待して撮影するんだろうみたいな。それにリーアム・ニーソンもジェームズ・ネスビットもよく承諾したなみたいな。
お互い事件によって苦しみの毎日を過ごしていてその苦しみにけりをつけたくて対面を承諾したみたいですけどね。北アイルランド紛争という政治的な問題のなかでの殺人だから成立する企画なのか。
ジェームズ・ネスビットは当時まだ子供で兄が撃たれるところに居合わせていた。サッカーボールで遊んでるところに覆面の男がやってきて兄を撃ち殺して去っていく。覆面の男と目があって、あわわわわって感じで何もできず。
そりゃそうだろって感じなんすけど、ひどいのが母親がお前はそこにいたのに何もしなかった、兄貴が殺されるのを防がなかったと言って彼を非難するのです。どんな親だ。お前のせいで死んだとまで言う母親。
ジェームズ・ネスビットも殺されてもおかしくない状況だったのに、助かってよかったとは思わずに、小さな子供を責める母親。やばいですね。ジェームズ・ネスビットはそのことが今でも心の傷になっている。それで対面したときにリーアム・ニーソンを殺そうと思ってナイフを準備しています。
お前のせいでおれは~って積年の恨みをはらそうと怒りのマグマをグツグツと煮えたぎらせるジェームズ・ネスビット。おまえにナイフをつきたてる瞬間がおれの至福の瞬間だと興奮してます。
リーアム・ニーソンのほうも事件後、心に傷を負って生きてきた。殺しをやったことで仲間内で英雄として称賛されたいと、そのことしか考えていなかったが、幼いジェームズ・ネスビットと目があったときの彼の表情が忘れられなくてずっと心は晴れない。
服役して出所してずっと孤独に空虚に暮らしている。
至福の5分間のためになんてだいそれた馬鹿なことをしたのかと後悔し続けている。まあ、それで洋館が対面場所にセッティングされて1階にリーアム・ニーソン、2階にジェームズ・ネスビットがいて2階からおりてきてご対面という演出で撮影が進むのだが、直前でジェームズ・ネスビットはやっぱり無理だと退散します。
ああ、やっぱ無理ですよねえみたいな。会っていったい何を話せばいいというのか。殺したる!と興奮してミスタービーンみたいな動きになっちゃうオアシスのボーカルみたいな顔したジェームズ・ネスビット。
ジェームズ・ネスビットがちょっとコメディっぽいぐらい動きのある演技をするいっぽう、リーアム・ニーソンのほうは静的な動きのない抑えた演技でやってます。これがなかなかいいですね。お互い事件によって人生が大きく変わって、事件の記憶に囚われ続けて生きてきたのは同じ。
それでどうするのかというと、最後殺し合いで殴り合って一緒に窓から落ちてダブルノックアウト。復讐なんかにとらわれずに娘たちとの生活のことだけ考えろと言われてそうだよなって納得。リーアム・ニーソンも組織から離れて新しい気持ちであるき出す。
和解するでもなく、お互い理解するでもなく、過去ではなく今を生きるしかないと悟ることが解決策だというエンディングかな。