後半、最後近くで突然みんな自分語りしだして、おれもわたしも殺しましたって言い始めてなんか滑稽で笑ってしまった。おいおい、なんだ突然、どした?って感じ。
岡田将生が盗撮するやつをぶち殺したことに触発されたのか、西島秀俊も運転手の子もとつぜん自分語り全開モードに入ります。岡田将生がなぜかホラーサスペンスモードに中盤から入るのもよくわからなかった。
なんか怖い感じになるんすよ。奥さんと浮気してたのに夫の芝居に出て、話して、嫉妬してるとかなんとか言ってなにがしたいんだ?それにたいして反応をしないようにしている西島秀俊も怖い。
映画が始まってからだんまりだったのが、喋りまくってすっきりしたのか、最後大丈夫だやっていけるって前向きになってたのも笑っちゃったよ。テンション上がって北海道までドライブしちゃって興奮して、人生いけるぜ!って中学生か?みたいな。
いや、最初から思ったこと言って、あれこれ言い合ってたらよかったやん?みたいな。奥さんがいろいろサイン出してただろ。セックスしたあとにお話してそれを覚えてないとか、覚えてないわけないだろ。あんなはっきりしゃべってるのに。
それを真に受けてそのまま受け流す西島秀俊。奥さんが浮気してそれをたいして隠そうともせず、むしろ気づかせるようにやってるのに、目撃してもなんも言わない西島秀俊。奥さん、うんざりしてたんだろなあ。
なんでだんまりでかっこつけてたん?みたいな。西島秀俊は娘が死んだとき悲しむべきだった。奥さんの浮気現場を見たときに、おいおいなにしてんの?って言うべきだった。悲しみにそのときそのとき向き合うべきだった。ただそれだけの話を長々とやってんの。
かっこつけて、うじうじと芝居に逃げてる男を見せられるつまらなさ。ほんとに西島秀俊がひどいやつなんすよ。なんかよくわからんのが、自分の感情に向き合えない、気持ちをさらけ出せない、他人の感情に鈍感なやつが俳優やってて演出家としてもけっこう有名で成功している。
そんなことあるのかな。なんか変だなあ。
なんなんだろうな。この変な感じ。いいムードをかもしだしてるけど、実は退屈なだけというアート系邦画によくあるタイプだなって思ったなあ。
変なシーンがちょいちょいあるんだよなあ。刑事がマイクで舞台の岡田将生にお話きかせてもらえますか?って呼びかけるシーンとかさ。なに、その芝居がかったやり取りってちょっと笑っちゃうというか、なぜ、マイク、なぜ、みんなの前で連行するのか、練習終わってから一人のところを捕まえたほうがいいだろみたいな。
まあ、岡田将生のキャラもよくわからないんすよねえ。盗み撮りされて怒るんだけど、怒り方がDQNすぎる。おい、てめー、いま撮ってただろ~、おい、消せよ!ってまるっきりチンピラみたいな言い方するんすよ。
え?そんなキャラなの?それと運転手の女の子のファッションも狙いすぎじゃないか。手塚治虫マンガのキャラクターじゃないんだから。
西島秀俊が俳優で舞台演出家でもあって、チェーホフのワーニャ叔父さんっていう舞台を出演、演出するためにセリフの練習を妻が吹き込んだテープを相手にやったりしてるシーンが長々と描かれる。
劇と現実の西島秀俊のおかれている状況や心境がシンクロしてという見せ方してるんだけど、それもうまい見せ方とは思えなかったです。劇もさあ、韓国人や中国人など多国籍キャストで韓国手話の人も交じって、それぞれがそれぞれの母国語でセリフをいうっていうやつなんだけど、長いんだよなあ、劇の練習のシーンが。
3時間も使って、サーブとか乗ってる気取ったやつはしょうもないやつだっていう話でしかなかった。意味ありげになんかやってるけど、かっこつけてるだけなんだよ。そこがなあ。かっこつけんなよとしか。
誰かツッコミキャラがいてほしかったね。これが運転手の女の子に、なにかっこつけてんすか?おじさんかっこ悪いよってボコボコに突っ込まれる話ならちょっとおもしろかったかもしれない。でも、女の子も一緒におじさんのかっこつけにつきあってかっこつけちゃう。
西島秀俊は、村上春樹小説によく出てくる、ぼくはそうは思わないけど、君がそうなら仕方ないね、やれやれみたいな自分で自分の感情に責任をとらないキャラクターで、村上春樹っぽさはすごくありました。
そこぐらいかな、よかったのは。西島秀俊という俳優の棒読みしゃべりと虚無なからっぽな性質が村上春樹の小説中の主人公とぴったり合致していた。