昔を懐かしみ、昔の良かった記憶にひたれるのは大人だからね。小さい子供はこういうの見てどう思うんだろう。今回のお話は大人たちがみんな懐古厨になっていなくなって、子供たちが残されてっていう形です。最後は野原一家が敵の計画を食い止めるために戦う。
戦うといっても、敵とどうこうするというより、自分の中にわきあがる郷愁、美しい過去の記憶、素晴らしかったあの時代への心地よい感情が戦う相手になっています。油断すると今を忘れて、楽しかった子供時代の記憶に溺れてしまう。
今を思い出すために、ひろしの臭い足の臭いをかがせるっていうのがすごいなと思って。20世紀の香りにやられて正気を失ったひろしやみさえを正気に戻らせるのがひろしの足の臭い。ひろしの足の臭さの中には、今のすべてがつまってる。
毎日毎日、営業で歩いて残業したりしてさ、足がムレムレでくさい。しんのすけ、みさえ、ひまわりたち家族との生活、家族の時間を過ごすためにがむしゃらに今を生きてきた証が足の臭さ。その匂いが過去への恋慕をたちきって、家族たちとの今と未来を思い出させる。
こういう設定にしたのがうまいもんだなと。これは大人はいいなと思っちゃいますね。ちくしょう、なんでここはこんなに懐かしいんだ~って泣きながらオート三輪を走らせるひろしに泣きそうになる。
昔はよかったって思う気持ちはわかるけど、実は昔という時代がよかったわけじゃないんすよねえ。若かった自分がよかったということなんだよ。まだ若くて過去より未来のほうが多かった時代の自分がよかったということ。
いい時代だったわけじゃない。昔の今より劣った技術や古い町並みや人の営みがよかったわけじゃなくて、それらが思い起こさせる昔の若かった自分が懐かしくてよかったなあって思うってこと。
敵のイエスタデイ・ワンス・モアはそこを間違ったから負けたんだなあ。あの二人はいったい何があったんだろう。現在や未来を悲観して全否定して昔に戻ろうとするなんてよっぽどのことがないと。まあ、謎ですけど。
ひろしやみさえが匂いにやられて、子供化して柄悪くなってお菓子とかジュースとか食べ散らかして満足気なのがおもしろかったなあ。子供のときってそうだよなあみたいな。自分の欲望だけしか見えない。周囲がまったく見えてない感じがリアルで怖い。
子供だったときは、欲望のまま、無限に続くと思って疑わない時間のなかで、おもしろおかしく毎日暮らしてた。と大人になると美化してしまう。ほんとはそんなことないんすけどね。