お話はすごいサスペンスというかミステリーな始まり方なんすよ。堤真一と石田ゆり子夫婦の息子がでかけたまま帰ってこない。そこに息子の友達が殺されて遺体が発見されたというニュースが飛び込んでくる。
息子はこの事件に関係しているのか。死体遺棄現場から二人の少年が逃げていくのが目撃されていて、もしかしたら息子がその一人ではないかと不安が広がっていく。事件の捜査が進展するにつれてマスコミ取材やネットでの中傷が加熱していく。
逃げて行方がわからない少年は実は3人らしくて、目撃された二人が犯人だとしたら、残りの一人は被害者でもう死んでいるかもしれないってことで、堤真一の息子は加害者かもしれないし被害者でもう死んでいるかもしれないという状況になる。
堤真一はあいつに人殺しなんかできないから犯人じゃないと言い、石田ゆり子はじゃああの子はもう死んでいるっていうの?わたしは犯人であってもあの子が生きているほうがいいと言います。
妙に冷静に見える堤真一と、不安に耐えきれずに錯乱してるように見える石田ゆり子。この違いが面白かった。石田ゆり子がやばいです。
あれは母親だから子供の無事を願っているというよりは、生きているのか死んでいるのか、加害者なのか被害者なのか、どっちなのかわからない不安な状態に耐えきれずになにかしてないと正気を保てないからあんな感じになっているように思えた。
息子がどうとかいうより、自分が不安なのに耐えきれないって感じがしました。いっぽうの堤真一は妙に冷静なんすよねえ。あいつは人を殺すなんてことできないって小さかったときの記憶を持ち出して信じていましたが、今は息子は反抗期で全然話もしてないみたいだった。
とくに息子とわかりあってるような描写はなかったんだけど、どうしてそこまで息子を信じられるのかよくわからなかったなあ。
そんな感じで前半は息子が加害者なのか被害者なのかわからず不安なまま疲弊していく家族と、加害者っぽいという流れになって世間からたたかれていく家族が描かれます。家に落書きされたり、報道関係者が押し寄せて家の前に居座ったり、仕事も取引相手から手を引かれて立ち行かなくなったり。
それが後半はやっぱり被害者っぽいという流れになって、やっぱり犯人じゃなかったということになります。
犯人ではないということは、被害者で殺されてるということで、息子は死んじゃってるから全然よかったということではない。どっちにしろ最悪ということなのだけど、なぜか映画の中では犯人ではなかったということで、事態が好転していくのを描く。
いや、犯人じゃなかったけど、揉め事に巻き込まれて死んでるわけだから、全然、そんな前向きな気持ちにはならないと思うんだけど、堤真一や石田ゆり子、妹らは前向きな気持ちで以前と変わらない生活に戻っていく。
そんなことあるかな?みたいな。前半、犯人扱いされて家族が破滅の危機になったのが、後半被害者だとわかって反転するというのを描きたかったんだろうけど、いや、そんなすっきりする話じゃないと思うけどなあっていうね。
加害者か被害者かどっちなのかというサスペンスの決着が普通に被害者だったという終わり方で、ちょっとほかになにかなかったのかなと落胆しました。
描き方もどうなのかなっていうところ多かったです。堤真一が取り上げていた小刀が息子の部屋にあることを発見して、やっぱり息子は犯人じゃないと強く思うのは百歩ゆずってわかるとしても、そこからいきなり葬式に乗り込んで揉め事起こすのは、突飛すぎる。
小刀もさ、別のを買ったかもって思わないのかな?石田ゆり子の不安につけこんでとりいってくる雑誌記者かなんかの松田翔太も最後はなんかいい人みたいな感じになってて、ちょっとなあ、嫌なやつなら嫌なやつでよかったのになあっていうね。
刑事の二人組がロボットみたいな喋り方で変なのは、警察は家族のことを思いやるわけでもなく他人事で事務的に仕事してるだけだというのを演出してるのはわかるんだけど、なんかちょっと変な味が出すぎてるように思ったなあ。