そこに別れた元夫から小包が届く。中身は小説の原稿。元夫のジェイク・ギレンホールは小説家志望だった。原稿を読みながら、エイミー・アダムスは元夫との生活を回想するってな感じです。
エイミー・アダムスの現在の生活のシーンと、小説世界の描写のシーンと、彼女が若かったときジェイク・ギレンホールと一緒にいたときの過去のシーンが入り混じって描かれます。
監督がトム・フォードなので映像がものすごくセンスいい映像なんすよ。物語はそんなおしゃれな話じゃないし、どちらかというと感情ドロドロの泥臭い話なのに、映像はすごいスタイリッシュ。そのアンバランスな感じが不安な印象を与える。
まあちょっと長いというか、小説世界の描写がしつこい感じしましたけどね。小説世界の描写はもっと短くタイトにしたほうがスピード感でてサスペンスとしてもっとよくなると思う。
小説の内容は夫と妻と娘が車で夜走ってるとチンピラにからまれて拉致される。夫だけなんとか逃げるが翌朝警察と一緒に来た道をたどると妻と娘は殺されて死んでいた。
夫は保安官と一緒に犯人を探し探し当てるけど釈放になるということで、末期がんだという保安官にうながされて私刑に及ぶってな陰惨な暗い話の小説です。
この小説は元夫が彼女との結婚生活で感じたことをもとに書いてるらしく、エイミー・アダムスはこころ揺さぶられまくりです。あんなことあったこんなことあったっていろいろ思い出す。
それでさ、元夫に連絡して食事の約束してレストランに行くんだけど、元夫は約束の時間になっても現れない。エイミー・アダムスはまたやり直せるかもって期待してたんだけど、一度壊れたものはもとには戻らない。エンド。
なんだかすごい雰囲気のある映像でセンス抜群に描かれるので、なにか大きな大層なことが起きるんじゃないかと思っちゃうんだけど、これ、全部心の中の感情の動きのドラマだからそんな大事件は起きない話ですよね。
エイミー・アダムスの後悔、懺悔の気持ち、やり直せるかもという希望、それが打ち砕かれる落胆。そういう心の動きのドラマ。
エイミー・アダムスは金持ちの娘なんすよね。母親に反抗してお母さんみたいな保守的で頭固い人になんかならないわって思ってるんだけど、結局、嫌ってる母親と同じような人間になってしまった。
ジェイク・ギレンホールとの結婚生活に未来が見えなくて続けることができなくなってしまう。そして相談もなしに妊娠した赤ん坊を堕胎してしまう。
元夫はこれが許せなかったみたいですね。それでこんな暗い救いのない小説を書いて彼女に送りつけたんだなあ。小説内で主人公は、戦うべきときに戦うべきだったと後悔する。嫁と娘がチンピラにからまれているのに、大丈夫だなんでもないとその場を穏便にやりすごそうとした結果が嫁と娘の死。
元夫はエイミー・アダムスに子供を堕胎させないように戦うべきだったという後悔がある。エイミー・アダムスを小説内のチンピラたちに置き換えてるわけですね。主人公にとって大事な存在である妻や娘=堕胎された子供を奪った存在として。
チンピラたちに復讐するジェイク・ギレンホール。元夫のジェイク・ギレンホールは彼女に復讐を小説という形でやりとげた。もう過去はもとにはもどらない。
なんか中年の危機をスタイリッシュに謎めいた感じで描いた話って感じです。誰しも40歳こえて50歳とかなってくると、若い時ああしてればよかった、あそこで人生が分岐したみたいな後悔を感じる。
ひょっとしたら昔にもどって今からでもやりなおせるかもってちょっと思ったりするんだけど、現実にはそれは無理なんだなと思い知って、後悔を噛み締めて生きるしかないみたいな。そういう話だったなあ。