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『陽のあたる場所(原題:A Place in the Sun)』【映画のあらすじとネタバレ感想】


中途半端はよくないよっていう話かな。悪人になるなら悪に徹する。お人好しとして小市民の生活を良しとするなら最初から野望をもつべきでない。どっちつかずの主人公モンゴメリー・クリフトは、死刑になってしまう。彼が非情な極悪人であったり、最初から高望みをしない凡人であれば死刑にはならなかった。

悪人にも徹しきれず、小さな幸せで満足もできない中途半端な心と行動が、彼を破滅に導いた。状況に流されていく心が彼を不幸にした。

下手に人としての魅力があるから招いた悲劇でもあります。貧困の中で育った青年。大金持ちで大会社経営している一族の遠い親戚なんすよ。それで叔父を頼って仕事を世話してもらいに町にやってきます。

同じ苗字をもつ一族といえど、自分は何ももってない貧困最底辺。叔父たち一族は毎日パーティーで豪華な食い物洋服車クルーザー邸宅なんでももっている。そんな状況で単純作業の部署の仕事をもらってしこしこ箱詰め作業。

彼はいつかは自分も金持ちになるぞって密かに心の奥では思ってるんだけど、のし上がるためになんでもやってやるというほどの黒い心はもっていません。どちらかというと好青年です。真面目な純朴さがある。だから叔父にも気に入られるんだろうね。

同じ部署で働く地味な女の子と恋人同士になる。まあ、この時点でさ、それなりにうまくいってるわけですよ、お金持ちでは全然ないけど、仕事にはありついてる、全然小さい仕事だけど、恋人もできた、田舎臭い地味な女の子だけど、小さな幸せはつかんでる。

叔父は青年の真面目な働きぶりをみて、もっと重要な仕事を任せようと言う。仕事で昇進できそう。そんなときに知り合っちゃうんだなあ、高嶺の花と。大金持ちの娘、エリザベス・テイラーと。

そして彼女のほうも彼に一目惚れで夢中になる。仕事はうまくいって一族に認められるかもしれない、そのうえ、大金持ちの女性と一緒になれるかもしれない。これほどの幸運が舞い込むとはと、手放しで喜ぶところなんすけど、ことはそうはうまくいかない。

今の恋人が妊娠。結婚してくれないと、わたし死ぬとかみんなにいうとか騒ぎはじめる。叔父から社内恋愛は禁止だぞって言われてたから、二人がつきあってるのは秘密になってて会社の人は誰も知らないんすよ。

だから青年は、どうにかしてこの女と手を切る方法がないかと悩む。穏便にどうにか別れられないかと。彼女をどうにかできたら、大金持ちの娘と結婚して仕事でも出世して、お金持ち一族の仲間入りができる。でもうまい方法が全然おもいつかないし、時間稼ぎで先延ばしにするほどに、彼女はエキサイトしてきて新聞社に話すとかばらすとか言い出す。

すべてぶち壊しになるかもという恐怖。目の前に幸運がぶらさがってるのに、あきらめられない。それで湖でのボート事故を装って彼女を殺そうとニュースを聞いて思いつくんだけど、ぎりぎりまでやっぱりできないって思ってるんすよ。

段取りは組んだし、もうここまできたらやるしかないという状況まできてるのに、やっぱり無理だと思って踏み込めない。彼が極悪人に徹することができたら、もっと完全犯罪にするためにいろいろやったと思うんすよ。

でも彼は計画はぼんやりと考えていたけど、実行はなりゆきまかせなんすよ。行き当たりばったり。結婚の手続きをしに役所にいったら祝日だった。もし休みじゃなかったら、そこで彼はあきらめていた。湖でボート借りて、客は彼らだけでほかに誰もいない。もし大勢の観光客がボートを借りていたらあきらめていた。

そんな感じでどんどん計画実行に近づいていく。モンゴメリー・クリフトの気持ちはやるかやらないかどうしようかで揺れ動き続ける。

それでボートが転覆して彼女だけ溺れ死ぬという結果にはなるんだけど、それは彼が意図したわけじゃなくて、偶然、彼女が怒って立ち上がって騒いだから起きたほんとの事故だったんすよ。まあ、助けを呼んだり自分で探したり、積極的に救助してないから見殺しにしたことには変わりがないんすけどね。

最後までこうなんですよ。モンゴメリー・クリフトは気持ちがかたまっていない。なんでもやって大金持ちになってやるぞっていう悪意と野望のかたまりのような男ならもっとうまくやる。

最初っから同僚の貧乏な田舎娘なんか相手にしてないだろうし。

ぼくには大金持ちの親戚がいるけど、自分が同じようになれるとは思ってないっていう野心のない青年なら今の彼女とのつましい人生で納得する。

あわよくばっていうね。思いもよらない幸運が転がり込んできたっていうのが危ないんだ。もしかしたら夢にも思わなかった成功が手に入るかもって思ってしまう幸運が、人を不幸にしてしまうという皮肉。

いやー、怖いですね。これってほんとそうなんですよ。はなからチャンスが零なら無謀なことやらないけど、もしかしていけるんじゃないかという希望が見えたとき、人は危険なギャンブルに足を踏み出してしまう。

好事魔多しっていうのはほんとそうだね。


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