新型コロナウィルス感染によって亡くなったファッションデザイナー高田賢三氏の自伝本です。
巻末にコシノジュンコと高田賢三の対談、山本耀司のインタビュー、高田賢三がパリと姫路の思い出の場所を訪ねた回想録を収録。KENZOの服は、自分の親の世代に流行ったって感じなので、自分で買ったり着たりしたことはなかったけど、KENZOの名前だけはすごくなじみがあります。
ライセンス商品でいろんなものにKENZOの名前がついてたから、服以外の商品でよく目にしてたなあ。
生い立ちから、文化服装学院時代、パリ時代、ジャングル・ジャップ開店からKENZOブランドの隆盛、共同経営者との不和からLVMHモエヘネシー・ルイヴィトンへのブランド売却、その後と詳しく書いてあって面白かったです。
これは朝の連続ドラマとか大河ドラマとかでやったらいいんじゃないかみたいな波乱万丈ストーリーでした。
船旅でパリに渡って、自分のデザインスケッチをいろんな店や出版社に持ち込んで買ってもらえたのがきっかけでどんどんデザイナーとして人気者になっていく。
熱い。それまでのファッションショーの型を破る華やかなショーをやってパリで評価を高めていく。これまた熱い。
イブ・サンローラン、カール・ラガーフェルドらとの交流。生涯のパートナーとなった貴族のグザビエ・ドゥ・カステラとの出会いと死別。
熱いですね。どこのパートを切り取っても絵になる話が盛沢山。ケンゾーブランド売却で手にした大金で家づくりに熱中してしまうっていうのもすごいです。
ほんとに貴族の遊びっていうか、貴族の発想っていうかね。頭の中にある美意識を実際に現実の世界に再現するなんて貴族か王しかできないことでしょう。
フランスに京都の庭園を完全再現する数寄屋風大邸宅を作ろうっていうんだからすごいよ。日本で作って、それを分解してフランスに輸送して職人を呼び寄せて組み上げる。
とことんまでこだわって贅を尽くしてフランスに日本風大邸宅を作ってしまう。
完全に貴族ですよ。貴族が城を作るのと同じかな。
破産も経験するんですよねえ。もともとお金に無頓着な人のようで、カジノも大好き、あったらあっただけ使う人だったみたいです。
ケンゾーブランドを手放した後も、オリンピックのユニフォームのデザインを手掛けたりしてましたねえ。
いやー、おもしろい。新しい時代っていうのは、その時の主流ではないカウンターの中から生まれていくんだなっていうね。
閉鎖的空間で限られた人間だけが楽しめるオートクチュールファッションが主流だった時代から、開放的空間で多くの人が目にして手にとれる既製服プレタポルテの時代へ。
その流れを作ってのっていった代表的な一人が高田賢三氏なんだろなあ。
ケンゾーをはじめいろんなブランドが華やかでゴージャスなものを展開する時代のあとに、まったく異質なカウンターとして黒を基調とした川久保玲や山本耀司の時代がやってくる。
閉鎖的から開放的。ゴージャスで華やかで完成されたものから、モノトーンで非対称。
対極から対極へ。時代の揺れ動きっていうかね。ファッションの破壊と創造の歴史が高田賢三氏の自伝から読み取れて面白かったです。81歳かあ。やっぱ一時代を築くような人はバイタリティがすごいですね。