時任三郎は父親の顔も知らず育った。よりどころとなるバックボーンがなくて彷徨う沖縄の若者。ヤクザの組が居所になってたけど、抗争かなんかで組をたたむことになってそれもなくなる。宙ぶらりんの若者です。
藤谷美和子という彼女がいるけど、落ち着いてかたぎをやるっていうやつじゃないんすよ。すぐかっかする血の気の多い若者。ぎらついてんなあ。親友を殺されたことにきれて相手の組長を暗殺。逃亡生活です。
沖縄からフィリピンへ。フィリピンは父親のいるところだし、金を用意したら手引きしてくれる人もいて無事にフィリピンへ到着です。田中邦衛が助けてくれたり、船の船頭が三船敏郎だったりします。フィリピンであやしい商売やってるのが原田芳雄。
原田芳雄のもとで働いて、カルロスとして生きる時任三郎。なんかみんな顔つきがすごいのよ。貫禄あるっていうかさ。味があるというか。泥臭さがある。
後半、フィリピンで撮影されてるんだけど、原田芳雄が現地になじみすぎで笑っちゃう。うわー、いそうだな、うさんくさい商売やってそうって感じ。時任三郎もフィリピン人とのハーフと言われれば、そうなんだと違和感なく思える感じです。
船頭の三船敏郎もすごい顔だ。三船敏郎が出てきたときびっくりした。え?なんかこの船頭さんすごい重要人物なんかな?って思ったけど、べつに重要な役ではなかった。
藤谷美和子も懐かしいですね。すごいたくさんテレビドラマや映画に主演して賞もいっぱい受賞して、歌とかもやってヒットしてましたよね。芸能界引退しているので、若い人はぜんぜん知らない女優だと思うけど。
お話は逃亡する話なんだけど、追手との激しい戦いとかはないので退屈する人は退屈だと思います。サスペンスアクション的なのを期待するとがっかりする。これは湿っぽい人情ドラマなんすよねえ。
いったい俺はなんなのかと悩む若者が自分のルーツをたどり、そして破滅するっていうお話。アメリカンニューシネマ系?っていうやつかな。それを沖縄という設定でやってる。だから最後、時任三郎は死ぬとわかってて軍隊につっこんでいく。
ここではないどこかを探して逃げ回った主人公が最後に死に突入するというひとつの形。父親をさがしあてるんだけど、父さんって言えずになんも言わずに去るのも悲しいなあ。はるばるスラムにまでいって父親と再会したというのになんも言えない。
片腕をなくし、スラム街で髪切りをやって暮らしてる父親の姿をみて時任三郎は髪を切ってもらうんだけど、なんも言えない。父親が幸福に暮らしてたらまだなにか声をかけることができたかもしれないけど。
沖縄に居場所がなくなり、フィリピンで父親と再会しても、そこに平穏な家族としての居場所はない。どこにも行き場がない。そうなると死へと疾走するしかない。