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『ウエスト・サイド・ストーリー(原題:West Side Story)』【映画のあらすじとネタバレ感想】


これはダメだった。大昔の傑作映画「ウエスト・サイド物語」をスティーブン・スピルバーグ監督がリメイクしたもの。ミュージカルなんだけど、まったく心躍ることがない。それどころか、歌のシーンが始まると、うわ、また始まったよいつ終わるのかな?って思っちゃう始末。

踊りも小さい動きでまったくダイナミックさがなくて、なにこれ?って感じだし。歌も踊りもいまいち、さらに撮り方もいまいち。なんていうか、色は鮮やかなんだけど、観て受ける印象は古臭い映画だなって。

新作が半世紀以上昔の映画に歌も踊りも撮影も演出も全部負けてるってどういうことなんだみたいな。棒立ちしていまいちな歌を歌う役者、こじんまりとしたダンスともいえない振り付け踊りをする役者を普通の映画と同じようにただ撮影している。

いやー、これをさすがスピルバーグ監督とヤヌス・カミンスキー撮影監督のコンビだ、横綱相撲で小細工しないストロングスタイルで素晴らしいねとかは言えないですよ。出来上がりの画面にまったく躍動感もなければ、気持ちが高揚するような仕掛けもないんだから。

一番の問題は感情の流れを描いてないことですね。違う組織に属する男と女の悲恋の物語なんだから、彼彼女の心の動きが一番重要なもののはずなのに、そこがまったくうまく描かれていない。すっぽり抜け落ちているといってもいい。

じゃあ、何を描くのに時間と労力を使ってるのかというと、舞台設定、時代設定に使ってる。どういう街で、どういう人たちが住んでて、どうなろうとしている街なのかっていう設定描写をずっとやってるんです。

そんなの延々とやられてもつまんないんすけど。主役の二人の心の浮き沈みを歌や踊りで増強したドラマが見たいわけでね。だから歌や踊りが始まると、うわまたなんかいらない設定説明シーンが始まったよってうんざりしちゃう。

人の感情の動きのドラマ、感情の爆発を体と声で表現するからミュージカルシーンが生きるわけで、感情の動きとシンクロしてないただの説明のミュージカルシーンは退屈な時間でしかない。

アンセル・エルゴートとレイチェル・ゼグラーの感情にフォーカスした物語のはずなのに、彼らの気持ちの動きがまったくわからない。共感できないというか、何を考えているのかがそもそもよくわからないので見てて腑に落ちない。彼らが変人にしか思えない。

一目惚れなら一目惚れのシーンをドラマチックに演出すればいいのに、あれじゃあなんだ、二人はもともとの知り合いでダンスパーティー会場の裏で落ち合って情事に及ぼうと約束してたみたいで、ちょっとハレンチな人たちにしか見えない。

兄貴がおいどこにいるって探してなかったら、あそこでおっぱじめてたよね?あれが一目惚れしたという演出だとはまったく思えない。

その後も二人の気持ちが高まっていく描写がなくて、ずっと不良グループの対立が高まっていくという描写ばっかりです。土地開発が始まって追い出されて行き場がなくなる人々っていう描写はもうわかったから主役の二人の話をしてくれよって感じ。

もうさ、何度も途中で見るのを中断して見終わるまで頑張るのが大変だった。最初の不良グループが縄張りを集団で練り歩くシーンからして、なんにも躍動感もないしかっこ悪いだけだしで停止ボタン。

工事現場みたいなとこで不良グループがにらみ合いになって警官がやってきて長々と立ち話するシーンでうんざりして停止ボタン。いつまでぼさっと立ってどうでもいいこと話こんでるんだ?って。このへんでもうええかなって思った。続きを見なくてもいいかってなりました。

そんな感じで何度も何度も途中停止しながら何日にもわたって小分けにして見てなんとか完走したって感じです。

ピストル奪い合って、バン、バーンとかはしゃいでるの見てなんだこれ?って呆れたりもしたし。兄貴を殺してきたアンセル・エルゴートとすぐにベッド・インするレイチェル・ゼグラーの気持ちがまるでわからない。自首しようとするアンセルを引き止めるためとはいえ、そんな気分になる?

兄貴の恋人に見つかって咎められると、「愛しているから」で押し通すのもわけがわからない。愛だといえばなんでもOKになるとでも?人の気持ちもわからない、人を思いやることもできない者が愛を語る陳腐さ。

てめえに愛を語る資格はねえ!この腐れ外道が!って言いたくなった。

愛を振りかざして悲しみに沈む人を攻撃する非道さにびっくりです。しかも恋人を殺した男へ伝言してくれとおつかいさせるとかどういう神経しているのかって呆れてなんも言えねえ。

よくわからないのが、歌も踊りもいまいちすぎる。ダンスにダンサーとしての動きの優雅さとか気品とかキレとかがまったく感じられない。歌も曲が古臭いからなのか、全然感情を揺さぶってこない。

ミュージカルなのに全然心躍らない。迫力がない。

なぜなんだろって不思議に思った。アンセル・エルゴートは歌や踊りがうまい役者じゃないから、いまいちなのはわかるとして、ほかのキャストもいまいちなのはなんなのか。プロの人たちがオーディションとかですごい人数から選別した一流のキャストとスタッフがやってると思うんだけど、まったくいいと思えないとはどういうことなのかと。

なんか、ダイナミズムっていうか迫力がないんだよなあ。置きにいってる感じ、当たり障りのないように、画面からはみ出ないように、こじんまりと歌ったり踊ったりしてるように見えた。

うーん、アンセル・エルゴート自体もあんまりいい演技してなかったと思う。なんかあんまり乗り気じゃないような、やる気があんまりなさそうに見えたけど気の所為かな。役柄が不良でもない、カタギでもない中途半端なやつっていう設定だからそう見えただけかな。

撮影もあんまりカットを変えたりせずにじっくり撮ってるんすよ。いやー、もっとカット割ってCGとかも使ってアメイジングな映像にしたらいいのにって思ったなあ。今リメイクするんだから、いっそのこと曲やダンスも今のものに刷新してやってもよかったんじゃって思ったけどね。

まあでも、これは懐かしのコンテンツ、思い出コンテンツっていうやつだから、昔のものを昔の雰囲気でやったものなんだろね。スピルバーグの個人的な思い出作り映画。子供のころに好きだった思い入れのあるコンテンツを、巨匠となって自由にできるようになった自分の手によって、僕の好きなウエスト・サイド物語をやるっていうやつ。

スピルバーグが自分の思い出づくりのために作ってる。まあだからスピルバーグは大満足なんでしょう。こういう思い出コンテンツって日本でもありますよね。ゴジラとかウルトラマンとかで。なんか古臭いのを古臭くやるっていうの。そういうのがまたヒットするんだからよくわからない。

老人の思い出作り映画をみんな面白い面白いっていって観てる。いやー、こんな加齢臭の漂うの見たくないよ。今作るんだから、今を反映した新しさがあるものが見たいんだ。スピルバーグも若いときはフレッシュなもの作ってたのに、いつからか実話ベースのおきまりのいつものやつみたいなのばっか量産するようになってたね。


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