冒頭にポアロの特徴的なヒゲの由来の説明が始まります。戦時中のシーンから始まって、なんだこれ?ってなった。こういう殺人事件ものって事件の始まりを予感させる匂わせシーンから始まるのが定石ってなもんですけど、ポアロの過去を描写することから始まってる。
これで、もうこの映画はポアロの映画なんだなって思った。殺人事件とかどうでもいいんだろうなって。それからお次は情熱のランバダダンスシーンへ。いやー、熱いダンスシーンでしたね。ウッチャンナンチャンのウリナリ芸能人社交ダンス部を思い出した。
ガル・ガドットが杉本彩姉さんに見えたよ。
情熱的なダンスと熱いブルースミュージック。いや、いいけど前置きが長いよって思ったけど、このブルース音楽っていうのもポアロのドラマを描くのに重要なポイントになってた。重要っていうか、ブルースって心の奥底にうずまく情熱をさらけ出す音楽じゃないすか。
ポアロがヒゲで古傷を隠していたように、人は誰しも過去の忘れたい思い出を隠して生きている。その古傷を隠すのではなく、ブルースのようにさらけ出すことで新しい人生に踏み出せるんじゃないかみたいな。
隠してしまいたいことを隠さずに認めてこそほんとうの生き方が見つかるみたいな。ブルースがその象徴として出てきてた。
ポアロが偏屈な探偵になったのは、過去に恋人を戦争で亡くしていたことが関係してたんだって。そんな設定、原作にあったのかな?よくわかんないけど、こういうミステリーものでは探偵役は事件の観察者、解説者であるので、正確な素性や過去は設定としてないことが多いんだけど、ポアロはどうでしたっけ。
ポアロは偏屈な名探偵で、ズケズケと他人の心に入り込んで、隠したいことを暴き立てて、人間のドロドロの感情渦巻く事件を数々解決してきたけども、そんな自分にはなりたくなかったらしいのです。
ほんとは恋人と田舎暮らししてカボチャでも作ってのんびり暮らす人生が望みだったらしいんだけど、恋人が死んだことから立ち直れずに、こんな偏屈探偵になっちゃったみたいなことらしいんです。
今回もズバリズバリと名推理でガル・ガドット殺人事件を解決してみせる。まあ、第2第3の殺人は防げず、犯人たちの自死も防げず、毎度お馴染みの死体の山なんすけどね。
最後はヒゲを剃ってブルースを聞くポアロのシーンでしめくくられる。他人の過去を暴き立てる側のポアロが自ら自分の過去をさらけ出して向き合う。ヒゲで隠していた古傷を隠さない、恋人の死から目を背けないという決意。
最初から最後までポアロの話として見てたらなかなか良く出来てたと思える話です。まあ、殺人事件が主役だと思って見てたら、けっこうイマイチかもしれませんね。
旅行気分も味わいたかったんだけど、エジプトの風景の映像がもろにCG丸出しで作り物感しかなくておもしろくないし、登場人物たちの衣装や表情もあんまりちゃんと写ってないので楽しめないし、映像的にはけっこうがっかりです。