いや、現場のマット・デイモン、クリスチャン・ベールたちはかっこいいよ。ル・マンで絶対的王者フェラーリを負かして自分たちが優勝するという目的にむかって全身全霊を注ぐ姿はかっこいい。
いや、マット・デイモンはちょっとかっこ悪かったかも。フェラーリのストップウォッチ盗んだり、ナットを落としてフェラーリのメカニックを混乱させるという小狡いことやってましたから。
中間管理職的な役割で、上のご機嫌うかがって現場との調整に神経使うって感じのマット・デイモンはあんまりかっこ良くはなかったかな。雇われ管理職は辛いよみたいな。
もっともかっこ悪いのは、社長のフォード2世、副社長、重役連中。フォードは販売が低迷してきてて、その打開策としてモータースポーツで優勝しまくって、世界一速くて美しい車だというイメージのフェラーリ社の買収を思いつく。フェラーリはレースでは王者だが、経営は行き詰まって破産寸前だった。
アメ車のフォードが金にものをいわせて、フェラーリのイメージをてっとりばやく手に入れようとしたけど、フェラーリに断られてプライドを傷つけられる。買収提案を断られるわ、フォードはくだらん車だなんだ、フォードはかつての先代のときのフォードとは違う、しょせん2代目がやってるくだらん会社だとか言われる。
それに怒ったフォード2世がレース部門をたちあげて、ル・マンに出場してフェラーリを叩き潰したると動く。予算青天井ですぐやれって言うわけ。
そのレースチームを率いることになるのがアメリカ人で唯一ル・マンで勝ったことのあるドライバーのマット・デイモンで、彼に見込まれたレーサーがクリスチャン・ベールってわけ。ふたりともスピード狂のレースキチガイです。
この二人はかっこいいですよ。でもフォードという会社はめちゃくちゃかっこ悪い。手っ取り早く金のちからに物を言わせようとしてるだけで信念というか情熱というかそういうのがまったくないかっこ悪い会社にしか見えない。
フォード2世は予算に糸目をつけず最高の車とレーサーでル・マンを勝てと言うんだけど、全部人任せで威張ってるだけ。めっちゃかっこ悪い。フォードの副社長かなんかが、事あるごとにクリスチャン・ベールやマット・デイモンに嫌がらせをしてきて妨害するのがめっちゃかっこ悪い。
そんな副社長に自由にやらせて任せてるんだから、フォード2世はやる気あんのかな?って思っちゃったなあ。レースの映画というより、企業内部の上層部と現場の闘争映画に見えたですね。
とにかくフォードがかっこ悪い会社だというね。それしか感想ないですよ。こんなかっこ悪いことする会社が作ってる自動車なんかかっこ悪くて乗りたくないよっていうね。この映画見てフォードの企業イメージ落ちたなあ。
マット・デイモンとかクリスチャン・ベールが頑張って世界一になったとしても、それも全部重役たちの懐をふくらませるためのことだし、フォードの車に乗るっていうことは、ああいうやつらにお金を払うことなんだと思っちゃうと、絶対フォードには乗りたくないってなっちゃうね。
まあ、フォードを買うお金もないんだけどさ。逆にフェラーリのほうはイメージアップですね。フェラーリはトップが根っからの車好きで美しく速い車を作ることに情熱をもっているというふうに描かれてたから。まあ、ほとんどフェラーリのことは描かれないんすけど。
フェラーリは乗ってみたいって思ったけど、フェラーリ買うお金は当然ないわけで。フォードも買えない、フェラーリも買えない。ただ惨めな気持ちになっただけだった。結局、権力者や大金持ちが肥えるために、すべてがあるんだと悲しい気持ちになった。
命がけで速く走ろうが優勝しようが、ただ金持ちを太らせるだけだというもの悲しさ。
映画としてもあんまりイマイチでしたよ、けっこう長いです。クリスチャン・ベールの人となりを描くのに嫁と子供のシーンだしとけ的なお決まりの家族ドラマやってて、それ全部いらんけどって思うし。嫁と子供のシーンを全部カットしたらもうちょっと見やすくなったかも。