最後のライブ・エイドのライブシーンに感情のクライマックスをもってくるようにちゃんとドラマをセッティングしてた。だから涙出ちゃったんだろうなあ。ライブ前に、メンバーとの和解、病気の告白、家族とのふれあいとかが描かれて、ライブへよし行くぞっていう感じに気持ちが盛り上がります。
そしてライブでクイーンは最高にノリノリのパフォーマンスを見せる。こりゃ気持ちが揺さぶられますよ。ウィー・アー・ザ・チャンピオンズですよ。いろいろあったけど、俺たちは勝利者だっていうね。この曲のために今までのすべての流れがあったみたいな。
これはなかなかうまく作ったですね。実際あったことをうまく脚色してドラマとしてまとめてある。評判として、ライブ・エイドのシーンの再現度がすごいとかいうのを聞いてたけど、そこはあんまりどうこう思わなかったな。再現じゃなくて、ラミ・マレックなりの解釈で演じてるって感じした。
ものまねショーにはならないように演じてたように見えた。それがよかったとこですね。
涙が出たのはもう一つ理由があって、音楽は人を救えないと思ってしまったからかなあ。よくさあ、音楽のちからとか、音楽で癒される救われるみたいなこというじゃないすか。でも音楽で人の孤独や悲しみや痛みを救えるのかというと救えないのではないかと。
ライブ・エイドみたいな音楽チャリティやってお金が集まって大勢の人が助かるのは、音楽の力でそれはすごいんだけど、人の孤独感や不幸と感じる気持ちは音楽で救えない。
フレディ・マーキュリーみたいな歌がうまくて曲もいいの作れてパフォーマンスもできて、何十万人という人の前でライブやって楽しませてる人でさえ、孤独感を音楽で埋めることはできないという現実。
よくあるじゃないすか。大ヒット曲をだして世界中でライブやって何百万人を楽しませて、ファンも5万といる有名ミュージシャンが酒やドラッグに溺れて死んじゃうこと。音楽の神に愛されたような才能あるミュージシャンが音楽で幸福感を得ていないというね。
音楽で孤独を癒せない。なんかそれが悲しくて涙出ちゃったのかも。音楽にちからなんてない、でもこの瞬間の気持ちの高揚は本物、曲が終われば消えてしまうのはわかっている、だからこそ美しいみたいな。
あのライブ会場でクイーンと一緒に大声で歌ったオーディエンスのひとりに自分もなったような気持ちになったね。ぼくらはボヘミアンで、さすらう魂は音楽でも癒せないけども、あの瞬間だけはチャンピオンだったみたいな。