1980年代のイタリアを舞台にした少年のひと夏の恋と別れの物語。少年の恋の相手は年上の男です。父親が大学教授かなんかで、そこに大学院生のアーミー・ハマーが夏を過ごすのにやってくる。
ティモシー・シャラメは17歳で同年代の女友達と初体験をしようかっていうお年頃。まあ性に興味でて行動し始めるお年頃ですね。
そんな少年から青年になりかけのティモシー・シャラメの前にあらわれた自分より年上で大人なアーミー・ハマー。なんかひかれていくティモシー。だんだん気持ちをぶつけていくようになる。
アーミー・ハマーはそれにすぐに応えようとはせず一度はやめておこうと拒絶する。うーん、少年を傷つけることになる可能性を考えてかな。でもアーミー・ハマーも少年をいいと思ってる、というかアーミー・ハマーのほうからモーションかけてたから、アーミー・ハマーが誘ったようなもんだけど。
そして結ばれる二人。ひと夏のあいだ楽しんだ二人だけど、夏の終りにアーミー・ハマーは帰っていく。別れ。自分の名前で相手を呼びあうほどの、一体感と幸福感を感じていた関係の終わり。まあ、辛いっすねえ。
ラストは何年か後ですかね。冬になってる。そこにアーミー・ハマーから電話がかかってきて婚約したと伝えられる。おめでとっていうんだけど、ティモシー・シャラメは一人涙する。夏の終りを噛みしめるような長回しのいいシーンなんだけど、画面の隅を虫が飛んでてそれが気になっちゃったな。
まあ、この映画のいいところは、みんないい人なところですね。変な悪意をもってる人が誰もいない。みんなすごい真面目に自分の気持ちや他人の気持ちに向き合っている。少年は別れの痛みをちゃんと受け止める。アーミー・ハマーはただの夏の遊びではなく少年とのことを大事に思ってる。
少年の両親がまたすごい。息子がアーミー・ハマーのことが好きで関係していることを知っていて何も言わない。怒るわけでもなく、やめさせようとするわけでもなく、ただ見守ります。他人と深く関わる体験が何よりも大事で、それを邪魔するべきではない、親子の関係であってもっていう考えらしいです。
すごい親だなあ。やっぱ学がある親は違いますね。息子の体験、息子がどう感じたか、息子の気持ち、それを尊重する。放任するんじゃなくて、ちゃんと見守った上で、君自身のことだから大事にしなさいよ、その気持ちをと話す。こんなできた親おる?って思った。
アーミー・ハマーがぼくの親だったら矯正施設送りになるよって言ってたけど、そこまでいかないまでも、取り乱したり怒ったり攻撃したりとかする親が多いだろうね。
でも若い時に他人と深く知り合えたという体験をしたという記憶は大人になってから、かけがえのない宝となるから、親は子供に変な干渉をすべきでないのはそのとおりなんだよなあ。そんな冷静でいられる親はあんまいないだろうけどね。
まあなんか夏が恋しくなる映画でしたな。酷暑の日本とは違うやわらかな夏の光の加減をとらえた映像もいいし、音楽もいい。坂本龍一のピアノ曲が使われてなかったっけ?きつい性表現はあんまりなくて抑えめだったから見やすかったけど、桃かなんかのシーンはちょっと勘弁してほしかった。果物食べるときに思い出しそうで。