人間、老いや死からは絶対に逃れられない、だからどう老いていくのか、死ぬまでに誰と過ごして何をするのかが大切だよみたいないい話を、スリラーの形式を借りてえがいているんだと思ったわけ。
最初から中盤まで後半もそんな感じなんです。すごいスピードで生物が成長、老化していく謎のプライベートビーチに誘導されて、そこを出ていくことができなくて、次々と死んでいく登場人物たち。
老人が真っ先に寿命がきて死んでしまったり、犬が死んだり、病気が加速して、悪化していくものがいたりするわけ。子供も数時間で大人になったりもします。体がでっかくなった子供同士がわけもわからずセックスして妊娠して出産して、赤ん坊がビーチの効力に耐えられず、すぐに死亡してしまったりもする。
生命の誕生と生命の成長と衰退、若々しさと病気、人が何十年も使ってたどる道を数時間で体験していく登場人物たち。ビーチから出ようとしても、謎の頭痛とめまいによって出れない。泳いで逃げようとしても同じ。岸壁を登っても気絶。
これは老いからは誰も逃れることができないということのメタファーだと思って見てました。もう逃げれないと諦めにはいった、離婚寸前だった夫婦が、夫は目が悪くなっていき、妻は耳が悪くなっていき、そうなるともう離婚の原因が何だったかなんてどうでもよくなって、ただ一緒に隣り合っているだけで、心が通じ合う、目も耳も悪いけどみたいなのがほっこりします。
このままいい感じのヒューマンドラマとして締めくくるのかと思いきや、最後は脱出して悪党を告発してススピード逮捕で正義は勝つみたいな終わり方で安っぽい感じになっちゃったなあ。いや、そんな早く解決しないだろ。
あの刑事は非番でリゾートバカンスしてただけだろ?前から失踪者がたくさんいて、このリゾートがあやしいと思って潜入捜査してた刑事ってわけじゃないと思う。なのに、簡単に事態を把握して迅速に手配して解決させてて、有能すぎて笑えた。
突然、おっさんとおばさんがあわられてノート見せて、おれは6歳の子供で時間のスピードがはやいプライベートビーチがあって、このリゾートのやつらが悪党でとか説明されたら、ちょっと何言ってるのかわからないですねってなると思うけどね。
刑事はすごく物わかりのいいやつで、やつらは全員逮捕したぞとか言っててどういうことだみたいな。あんな巨大製薬会社が大金を使って作り上げた長年の悪巧みが、あれであっさりと崩壊するとは思えない。
あまりにも安っぽいエンディングで、ああ、いつもの変なシャマランだ、期待を裏切らないなと安心した一方、こんな安っぽいスリラーにする必要なかったのになあとがっかりもしました。
脱出できなくて、最後までもがいて死を迎えるエンディングでもよかったんじゃないすか。老いからは逃げられないというのを見せて終わってもよかったんじゃないのかな。
シャマランといえば、植物が原因で人間が自殺しまくるだけの映画とかもなかったでしたっけ?なんか思わせぶりな導入と、なにかありそうと感じさせる演出が抜群にうまいから、楽しめるんだけど、終わってみると、なんだかなあみたいになっちゃう。
ホラー描写がめちゃくちゃなのがちょっと気になりましたね。医者が突然狂い出すのは、精神疾患があってそれが加速して症状が出てるってことなんだろうけど、あんな危ないやつを他の人たちはほったらかしにしすぎだ。
その嫁さんの最後もよくわからなかった。洞窟で自分で転げ回って、あちこち骨折して、それが変なふうに回復して、変なバケモノみたいになって死ぬとか、全然意味がわからない。変なホラー描写だったなあ。
変といえば、突然外科手術しだすシーンもめちゃくちゃだと思ったけどね。腫瘍が巨大化してる!手術しかない!とか言い出して、それで適当に手術して、腫瘍をとりだしたら、縫合も消毒も痛み止めもなんもなしで、回復して一安心って、どういうことだ?みたいな。
最後のサンゴ礁に突入するときも、シャツ着たまま泳いでて、そんなんじゃどっかひっかかって危ないぞって思ってみてたら、シャツがサンゴにひっかかって溺れかけるみたいなスリル演出になって、呆れた。服着たまま泳ぐって難しくて危険なのになんでシャツ着てるんだと思ったら、このためかと。
まあ、設定を細かく突っ込むような野暮はなしよっていうことなんだろう。特殊な鉱物の岩盤で囲まれた時間が加速する浜辺っていうメカニズムがまったくよくわからないんだからな。爪と髪が変化しないのはなぜだ!死んだ細胞だから変化しないんだ!って適当な理屈つけてたけど、死体は白骨化してたけど?みたいな。なんだか都合のいい話だなみたいな。
それにさ、治験っていうけど、あんなのでちゃんとしたデータとれてるのかな?遠くからシャマランがカメラでのぞいて見てるだけだったけど。薬の効果を測定するのを、見て観察するだけって雑すぎる。血液採取とかしてないし、スマートバンドかなんかで身体データを収集してるわけでもなさそうだし。
なんか適当なんだよなあ。これがさ、老いや死からは逃げられないという文学的なアート作品風で描いてくれるんなら、適当でいいんだよ。これは比喩や暗喩、メタファーとしての設定なんだなって思えるから。
でも、最後に悪を倒して、主人公たちが勝つみたいなサスペンス・スリラーみたいにやってるから、適当さが気になっちゃう。スリラーなら設定をもっとちゃんとしてルールを明確にして、それを主人公たちが乗り越えたっていうふうにしてほしいよ。