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1970年の三島『VR的完全版 平凡パンチの三島由紀夫/椎根和』【読書】


1970年にタイムスリップ。
三島由紀夫が楯の会の隊員たちと、
自衛隊市ヶ谷駐屯地を訪れ割腹自殺したのが1970年。

リアルタイムでは体験してない時代なので
こういう書物を読んで時代の雰囲気を感じるしかない。
本がタイムマシンってわけ。

なかなか楽しかったなあ。

1960年代、1970年代にホットだった平凡パンチという雑誌があったらしいです。
発行部数100万部をほこる男性向け週刊誌。
車、女、ファッションをとりあげ
話題をふりまいた時代を象徴する雑誌だったらしい。

平凡パンチで三島由紀夫もたびたび登場、とりあげられて
親密な関係だった。
平凡パンチとの関わりから三島由紀夫を描いた本です。

月給が毎年10%、20%あがっていくのが当たり前の時代なので
アートや芸能、音楽も過激だったみたいですね。
刺激に満ちた時代だったようです。

そんな平凡パンチが開催したミスター・ダンディを決める投票で、
三島由紀夫はぶっちぎりの1位をとる。
2位が僅差で三船敏郎で3位が1万票減って伊丹十三。

三島と三船が飛び抜けて得票数が多いです。
いやー、なんか意外でしたね。
三島由紀夫ってそんな大衆的な人気があったんだ。

文学はもちろん映画もボディビルも演劇もなんでもやる
スーパースターだというイメージはあったんだけど、
あくまでも文学者として人気があっただけで、
週刊誌の人気投票で1位になるほど一般的な人気者だったとは思ってなかった。

イメージが変わったといえば、
三島由紀夫が子煩悩な面もあったということもですね。
"家庭サービスの鬼 三島由紀夫"という章で
横山郁代氏の証言が読めます。

毎年、家族で夏に伊豆下田に行って夏休みを過ごすらしいんすけど、
そのときの様子が読めます。
いいパパやってる三島由紀夫とか想像してなかったけど
そういう面もあったんすね。

ハンバーグライスを注文して、
こうやって食べるのが一番うまいから君もやりなさいと、
ハンバーグをぐちゃぐちゃにつぶして
ライスをのせて混ぜて食べる三島由紀夫。

楯の会のレコードができてそれを編集部で筆者と一緒に聞いてるところに
若い編集者が帰ってきて
なにこれキモチワリイと言われて
気分を害して退散する三島由紀夫。

いやー、いろんな面がありますね、三島由紀夫という人は。
作品の難しさだけでも、あれこれ想像を刺激するのに、
本人の行動がこれまた刺激的ですごい。

いったい何個仮面があるんだって感じです。

死の瞬間までも舞台を自分で作ってシナリオ通りに演出してしまう。
行動力がすごい。
行動の人なんすよねえ。

貧弱な身体が嫌だと思ってボディビルやって鍛えていくとかさ、
剣道やったり居合やったり
これは簡単なようで簡単じゃない。

運動オンチで貧弱な人間が武道とかボディビルとか
やろうと思っても続かないけど、三島由紀夫は
内容はどうかしらんけど形になるまでやり通すわけで。

なんか人生設計をやってそのとおりに行動して
実現していった行動の人なんだよなあ。

私設軍隊を組織するのも、
考えついても実際やるとこまで行動できる人ってそうはいない。

東大入って官僚になってエリートコースだったのに、
作家になると執筆一本にしぼって、
賞をとってベストセラー作家になる。

映画や舞台やなんやらやって
それがすべて完成度高くて評判になる。
海外での評価もあがってノーベル賞も間違いないって言われる。

三島由紀夫の人生計画ではノーベル賞は受賞ということになってたんだろね。
それが受賞ならずで、師匠の川端康成が受賞なもんだから、
恨み言や愚痴を言うわけにもいかずで、落ち込んだだろうなあ。

それとやっぱ「鏡子の家」がまったく評価されなかったのも
三島由紀夫の人生設計にはなかったことでショックだったんじゃないでしょうか。

これやるぞ、これやったらこういう評価を得られるぞと
すべて計画的にやって実現してきた人が
中年にさしかかって、あれ?ちょっとこれは計画と違うということが
でてきて、なんかもうやりつくしたって達観したのかなんなのか。

自決した理由は
考えてもよくわからないですけどね。
三島由紀夫が自決した時代の空気をVRで感じられる本でおもしろかった。

写真もけっこう掲載されてました。
三島邸の写真とかもあって、自慢の内装のなかでポーズとって
写真におさまってる三島由紀夫がいいんだね、雰囲気あって。

写真と年表で意識が1960年代にタイムリープする。




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