勝手にさせて/秋吉久美子
エッセーとも短編小説とも散文詩ともつかない
短めの文章が32本収録されていました。
モノクロの写真が2枚。
1970年代後半から1980年代前半に書かれたもの。
若くてバリバリのときのエッセーですね。
週刊誌やファッション誌に掲載されたもの、
この本のための描き下ろしのものいろいろありです。
内容もいろいろ。
子供ののこと、病気のこと、ネコのこと、旅行のこと、
男の子女の子、先生、お父さん、友達。
映画のこともちらほら出てきます。
「赤ちょうちん」「さらば愛しき大地」のこと。
「赤ちょうちん」の打ち上げパーティーで
チーフ助監の長谷川和彦にウォッカのストレートを2杯飲まされて
酔って暴れたこととか書いてあります。
スタッフたちに感謝していい人な高岡健二に
わたしたちは大人の青春映画のために利用されただけなのに
なにへらへらしてんだと殴って殴り返されてみたいな話とか。
「さらば愛しき大地」で衣装で980円のドレスや280円の下着を
身につけたことの安心感と役に対する思い入れとか。
藤田敏八監督がぐうたらで遅刻魔であることなどです。
子供のことを書いてるのが面白かったなあ。
「ひどいめにあった」と「ウンコ」で息子のことを書いてあります。
母親をやるのを強制されることへの戸惑いと反抗。
三歳の息子がマッチ遊びしているのを叱る。
出刃包丁を置いて、腕を切り落とされるかマッチ遊びをやめるかをせまる。
一ヶ月検診でおもらしする息子のオムツをとりかえる。
そんなことしたくないのに、
母親だからそういう役割を当たり前にのぞまれることへの戸惑いが
ストレートに書かれていてロックだなあと。
文章が若くて、勢いがあるんすよねえ。
ロックしてるっていうか、とんがってる人だなあみたいな。
バリバリやなあみたいな。
秋吉久美子といえばなんだろな。
これっていう作品があんまり思い浮かばないけど、
森田芳光監督の「の・ようなもの」とかぐらいかな、
秋吉久美子自身がかもしだすオーラみたいなものが
一種の作品みたいな感じの女優ですかねえ。
秋吉久美子という作品をリアルライフで演じているみたいな。
そんな感じがします。
といっても、映画の出演してるリストを見てみると
印象に残るいい作品にいっぱい出てるんすよねえ。
大林宣彦監督の「異人たちとの夏」にも出てましたねえ。
あのお母さん役よかったなあ。
「旅の重さ」が最初なんだ。
そういや主役の人の友達役で出てたような気がします。
「八甲田山」は山の案内人の役でしたっけ。
寅さんのマドンナもやってんだなあ。
70年代80年代の女優って雰囲気ある人多いですね。
風吹ジュンとか桃井かおりとか。