映像的な仕掛けや遊びはあるし、いつものように癖は強いんだけど、
それが突出して見えない感じに仕上がってる。
内容も、あれ?これ普通の明るい青春物語として終わっちゃうのかなって感じだし。
60年代の香川県の観音寺市を舞台に、エレキの洗礼をうけロックに目覚めた
高校生たちがバンドを結成して
文化祭での演奏を成功させるまでを描いた青春音楽映画。
大林宣彦映画といえば死と別れ。
はちゃめちゃな明るい青春ファンタジーのような見かけで、
内容は重苦しい死や二度と戻らない時間のことを描いてる。
それがこの映画はけっこう明るい感じなんすよ最後の方まで。
ちっくん林泰文がラジオから聞こえてきたエレキギターサウンドに天啓をうけ
バンドメンバーを集めてバンド結成していく。
魚屋の息子、ギターの浅野忠信、お寺の息子でベースの大森嘉之、
練物屋の息子、引っ込み思案でニキビヅラのドラムス永堀剛敏、
アンプを自作できるほどの工学博士のやつなどなど
メンバーがそろっていくのを
青春やなあーっていうムードいっぱいで描いていきます。
山の中で合宿とかするんすよ。
暗さなんか微塵もない。
それが最後のほうにちょっとしんみりするんすよ。
先生の岸部一徳が突然死んでしまうとかね。
死が突然でてくる。
主人公たちと少し離れた関係の死なのでそれほど暗さは感じないんすけど、
別れが突然にやってくるという前兆ですね。
こっからなんだかしんみりしてきちゃう。
高校3年の文化祭を成功させ、
バンドメンバーたちはそれぞれの道を歩みだす。
一緒に過ごして一緒にバンドを作り、
練習し、演奏し、ロックした仲間たちとの時間はもう二度と戻らないし、
もう消えてしまったという寂しさ。
それぞれ別々の人生を歩んでる。
メンバーは地元でそれぞれ家業を継ぐ感じなのかな。
主人公だけが東京の大学を受験する進路。
バンドで合宿した場所や学校を一人で聖地巡礼して
もうあのとき過ごした時間の形跡はどこにも残ってないと
再確認する主人公の林泰文がいたたまれなくてねえ。
なんかすごい寂しくなっちゃった。
うわー、やっぱり大林宣彦映画、ただの明るい青春で終わってくれないよって
思ったんだけど、いやー、今回は救ってくれましたね。
バンドメンバーたちが主人公が聖地巡礼から
帰ってくるのを待っててくれて
おまえは終身バンドリーダーだって言ってくれる展開があって救われたなあ。
そしてエンディングは文化祭のジョニービーグッドの演奏シーンで
大騒ぎの中でしめてくれて
寂しいけれど寂しくないよみたいな感じに終わってくれてよかったです。
この青春デンデケデケデケって大林映画のなかでも
けっこう人気あるみたいで
大林宣彦映画ランキングとかで上位に入ることも多いみたいですね。
自分的にはそれほど上位にくるかなって思うんすよ。
大林宣彦映画としての灰汁が薄いと感じるから。
でも、やっぱ見やすいというか、青春、映像的な遊び、しんみりする別れ、
田舎の風景、そういう大林宣彦映画の要素が
どれもいい具合のバランスで配合されている映画だから人気があるんだろうね。
ある意味、若者の青春を描いた大林宣彦作品群の中で
集大成的な作品なのかもしれない。
まあでもよく見たら変なんですけどね。
一番好きな変なシーンは、
僕らはあーじゃこーじゃ言いながら準備したっていうシーンで、
ほんとにみんな口々にあああじゃこうじゃ、ああじゃこうじゃって
言いながら準備してたシーン。
笑ったなあ。
坊さんの息子の大森嘉之が、またいい感じなんすよ。
すでにもう坊主として地元の相談役的な役割をこなしてる。
仲間より一足先に大人社会で生きてるやつっていう感じが
演技もうまくてよかったですねえ。
ゲスト出演で南野陽子が最後にちらっと写ってましたけど、
なんだそれみたいな出演の仕方だったのが不思議。
石田ゆり子も出てるんだけど、ほとんどエキストラみたいな感じで
わざわざ出演した意味がよくわからんなみたいな。
あとは高橋かおりもでてましたねえ。
林泰文と一緒に海水浴に行った女の子どっかで見たなと思ったら、
「ふたり」で石田ひかりの親友役やってた柴山智加ですね。
大林映画常連というか、大林宣彦監督のティーン時代の分身として
数々若者を演じてきた尾美としのり氏が主人公の兄役ででてきてて、
ここでもひとつの別れというかね、
あのとき若者だった尾美としのりが今はもう大人になっていて
若者を見守る側になっているというのが切なさを感じる。
大林映画って映画の中の物語と実際の役者たちの年齢の重ねていく様が
重なって二重に楽しめるね。
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