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大林宣彦監督、原田知世主演、理想の愛を知った人間はしあわせなのか不幸なのか『時をかける少女』【映画】


土曜日の実験室!

怖い。

久しぶりに見返してみたけど、怖い映画だなこれ。

松任谷正隆氏による音楽が良くてね。

「ふれあい」っていう曲だっけ。

あのメロディが繰り返しでてきて、

なんかいい感じの雰囲気になるんだけど、

話としてはめちゃくちゃ怖くない?これ。

人の記憶の不確かさ、思い出に縛られる人生。

原田知世は記憶を消されて

深町くんの存在を完全に忘れてしまってるんだけど、

誰かを深く愛したという愛の感情の思い出だけは

心の奥底に残ってるわけですよね。

だから彼女はこの先ずっとその感情にとらわれて生きていく。

尾美としのりからのデートの誘いの電話も断っちゃう。

それでいいと彼女は思ってる。

永遠に報われることのない感情にとらわれた生き方を

この先ずっとしていくことになる。

息子夫婦と孫を交通事故でいっぺんになくした

あの老夫婦のように、

もういない人にたいする感情にとらわれて生きていくことになる。

あの上原謙と入江たか子老夫婦のシーンは彼女の未来を予見させるシーンで寂しいんだよなあ。

思い出を胸に生きるという残酷さ。

いない孫のものを買うのはもうよそう、よくないよという夫に

いけませんかねえ、ずーっとこのまま二人なんですかねえっていう妻。

もう辛すぎて胸が苦しい。

思い出にとらわれて、

もういない人のことを思って生きる寂しさ。

ほんとちょっとしたホラーですよ。

もう二度と会えない人との思い出を胸に生きるというのが

どれほど残酷なことなのかっていうのがいやっていうほどわかる。

高柳良一とは、ほんとは出会ってから1ヶ月ほどしかたってない。

原田知世が高柳良一との思い出だと思っていたことは

実際は尾美としのりとの思い出だったんだけど、

高柳良一の念波によって高柳良一との思い出だと思い込まされていた。

思い出が捏造されていたわけですけども、

それを知っても原田知世は高柳良一への思いが

偽物であるとは思えない。

今沸き起こるこの感情に嘘はないはずなのに、

そのもととなる思い出は嘘だと言われる。

もうね、錯乱状態ですよ、最後。

わからないわからないわを連発。

自分で自分がわからない。

この胸に湧き上がる感情は本物なのに、

それが嘘であるなんて、理解不能でわからない。

もうね、混乱の極みなんすよ、原田知世。

土曜日の実験室のラベンダー事件から、

時間は戻っちゃうし、高柳良一はぼくは未来人だとか言うし、

思い出が捏造だと言われるし、

それまでがすべて否定されてひっくり返される。

なのに深町くんへの愛は確かなものにしか思えない。

そりゃ、わからないわ連発で錯乱しますよ。

怖すぎる。

深町なにしてくれてんねんみたいな。

記憶消すなら全部きれいに消さんかいと。

高柳良一がちょっと怖いんだよなあ。

後半、高柳良一の喋り方が怒鳴り気味でぶっきらぼうだったり、

暗闇に目がギョロリみたいな撮り方がちょっと怖いし

深町くんってそれほど原田知世のことを好きでもなさそうなんすよねえ。

好意はあるけど、原田知世ほどじゃない。

原田知世は熱烈に思ってるけど、

高柳良一のほうはもっと冷めた感じでクールな距離感をたもってる。

またそこが寂しくて残酷な感じしましたね。

原田知世の思いが報われることがないどころか、

その思いの相手はそれほど思ってくれていない。

相思相愛ではないみたいな。

なんかほんと思春期の多感な時期に短期間に体験した

激情の思い出の強力さをよく表現してる映画だなあ。

十代の短期間の体験がその人の一生の生き方を決定してしまう。

そこがほんと美しくもあり、怖くもありで。

いやー、最後の原田知世が歌うシーンがあってほんと救われた。

薬学部の廊下で深町くんと再会するんだけど

すれ違ってそのまま別れるラストだと

あまりにも残酷すぎて、やってらんねーよってなっちゃうとこでした。

やっぱあのエンディングはいるよなあ。

ただの原田知世のアイドルプロモーションシーンかと若いときは

思ってたんだけど、原田知世演じるあの子の思い出アルバムみたいで

確かにあの時を生きたという証みたいな感じで救われる。

始まりは偽物の記憶だったかもしれないけど

あの1ヶ月の時間は嘘じゃないんだっていう救い。

この映画、やっぱ松任谷正隆の音楽に相当救われてるなあ。

「ふれあい」を耳にするたびに、

美しくも悲しくそして恐ろしい感情が沸き起こって

鳥肌が立つようになっちゃった。

まあ、これは大林宣彦監督映画で人気投票したら、

だいたい1位かベスト3に入るのも納得の映画ですね。

へんてこなんだけど、すごく暗示的なシーンがいっぱいあって、

考えだしたら止まらないんだよ。

最初に画面に現実よりも理想の愛を知った人間が

しあわせなのか不幸なのかって

ずばりとこの映画の核心を文字で出して説明しちゃってるし。

岸部一徳と根岸季衣がやたらとベタベタするシーンがあるのは、

大人の肉体関係ありの愛の形を、

原田知世たちのプラトニックな精神的な愛と対比させるために

そうしてるのかなとかさ。

原田知世と尾美としのりの未成熟で拙い愛情関係の描写もいいんすよ。

お醤油の匂い好きよというのは原田知世の愛の告白じゃないすか。

それを今ちょっと手が離せないから黙っててくれとはぐらかす尾美としのり。

少女の無意識の愛の大告白をうまく受け止められなくて

ごまかしてしまうまだ大人の男になれていない少年。

彼らは徐々に大人になって関係を育てていくはずだったけど、

そこに未来人=一足先に大人になっている男、深町が割り込んできたもんだから

原田知世は混乱してしまうってわけですよねえ。

なんか、思春期に悪い男にひっかかって

うまく大人になれなかった少女の話に思えて

やっぱり怖い話だなって感じちゃいますね。

あれこれ考えさせてくれるおもしろさがあるね。


・DMM動画で「時をかける少女」を見る


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