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誰もが不幸になる、渡哲也の無頼シリーズ最終作『無頼・殺せ』【映画のネタバレ感想】



渡哲也の人気シリーズ無頼の6作目バラせ。

最終作品のようです。

渡哲也ももう亡くなっちゃったなあ。

もういないのかあって思うとなんかしんみりしちゃうね。

渡哲也といえば、西部警察の大門というイメージしかないです。

あのサングラスにショットガン。

大門軍団を率いるカリスマリーダー。

頼りになる団長みたいな。

西部警察やってた時代が自分が子供で

ああいう刑事モノとか大爆破ものが大好物だった年齢だったので

すごい印象が強く刻まれてるんすよ。

日活映画時代の渡哲也を知ったのは、

極端にいえば最近ですね。

日活の映画スターだったというイメージがまったくない。

でもスターだなっていうイメージはあります。

やっぱあの時代の映画界にいた人って

独特なスターオーラがありますよね。

映画に勢いがあった時代に主演映画が毎月公開されるような

存在だったからやっぱなんかテレビ時代の人気者とは

また違うでっかいオーラがあるっていうかね。

映画1本1本は、名作でも傑作でもないんだけど、

でっかいスクリーンで映写され続けた濃い時間を経た大きさっていうかね。

スターって不思議だなあ。

この無頼も人気シリーズだったらしいんすけど、

たいした映画でもないっていうか、

アウトローの生き様の寂しさを描く任侠ヤクザ映画です。

裏社会で生きる男たちの悲しさ。

みんな幸せになれない裏街道。

渡哲也はフリーのヤクザ。

さすらいの一匹狼ですね。

人斬り五郎と恐れられ名を知られる侠客でしたっけ。

そんな渡哲也が出会う男たちが散っていく生き様を描いていきます。

演じてる俳優の現実とシンクロしてるような役を

やってるのが面白かった。

和田浩治はいつかはヤクザとして出世を夢見る若者。

度胸もないし、ヤクザに向いてないから、

渡哲也はもうカタギになって彼女と楽しく暮らせよと諭すのだが、

言うことを聞かずでっかいことやろうとして死んでしまいます。

和田浩治はミニ裕次郎としてスカウトされて日活映画に入ったんだっけ?

やんちゃガイとして、タフガイ石原裕次郎、マイトガイ小林旭、

クールガイ赤木圭一郎とともにダイヤモンドラインの一角を担うも

映画界の斜陽期と重なり裕次郎や旭のような大スターには育たなかった。

でっかいことして大物になることを夢見て

それが叶わず散っていくという役に現実が重なって見えます。

郷鍈治もそうなんだよなあ。

郷鍈治は、組長から敵の縄張りを奪うために

先遣隊として派兵される。

敵のシマに居座って暴れてこいってわけ。

組長は敵と相打ちになってくれりゃあ儲けものだぐらいに思ってる。

捨て駒です。

渡哲也は郷鍈治にもうやめとけと諭します。

うまくいったとしても笑うのは後ろで糸引いてるやつらで

おまえになんも得ないぞと。

こういう裏の社会での生き方しかできない郷鍈治は

やめることができず抗争の中で散っていく。

援軍は来ず、捨て駒として見捨てられ、

敵の殴り込みが迫る中、

電話で野添ひとみに渡哲也への伝言を頼む郷鍈治が悲しい。

五郎さんがいう世の中がわかりかけてきた、そんな気がする…っていう伝言。

郷鍈治は宍戸錠の弟でしたね。

ちあきなおみの夫でもあります。

印象的な脇役として数多くの映画でいい役演じてますが、

どこまでいっても脇役は主役になれない。

脇がうまくやっても、全部主役の手柄だぞってわけ。

この映画でもいい死に様を見せてくれてたけど、主役ではないですし。

なんかほんと現実と役が重なって見えます。

また、渡哲也が居候としてごやっかいになる組長も不幸な最後を迎えます。

野添ひとみに赤ん坊ができて

ヤクザものでも人並みの幸せを手に入れられると思った寸前で

手が届かない。

抗争をのりきったかに見えたがやられてしまうのが辛いですね。

それで仇討ちを渡哲也がやるわけです。

新しい縄張りをうまく手に入れたわいと

ご機嫌だった敵の組長だったんすけど渡にやられてこれまた不幸な最後。

これでお話は終わり。

全員不幸になって終わりです。

仇討ちを終えても、待っていてくれる人もいない、

帰れる場所もない。

傷つきトボトボと一人去っていく渡哲也がなんとも寂しい。

いい感じだった松原智恵子は待っててくれないのかあ~。

渡哲也もまた不幸なのです。

ヤクザたち、誰もが不幸。

それが無頼という生き方なんだっていうわけ。

確か、この無頼シリーズって全部そういう話じゃなかったっけ?

全部見たことないけど、何作かは見たことあると思うんだけど、

ヤクザな生き方をする男が不幸になって

死んでいく話のシリーズじゃなかったっけ。

幸せになって終わったパターンあったかなあ。

見終わって気持ちが沈む映画ですね。

お話はどんよりとしたダウナーなんすけど、

映像や音楽は1969年の混沌としたムードがあってアッパーなんすよ。

それが面白かったなあ。

セットがなんかハリウッド映画にでてくるニセ日本みたいに見えて

なんだかおもしろいし、

最後の乱闘シーンはサイケ歌謡曲のライブシーンと

交互に映されるというポップさ。

演奏してるバンドが内田裕也とザ・フラワーズなんすよ。

オープニングロールの出演者がずらずら書いてあるとこに

内田裕也とザ・フラワーズってクレジットがあったから

え?内田裕也?どこででてくるんだろって思ったら

最後にライブシーンだったです。

ボーカル麻生レミの隣でタンバリン叩いてるグループサウンズヘアーの男が

内田裕也かな?

こんなとこでシェケナベイベーを見かけるとはね。

なんか得したような気分になりました。

60年代後半、70年代の映画は混沌カオスしてるから

内容以外にも見どころがあって楽しいね。



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