実話の映画。
三菱電機の社史映画みたいなもんですけど、
石原裕次郎ら豪華出演者たちの重厚感ある顔演技で
なかなかおもしろくみれました。
ヘリコプターの映像もなかなかいいし。
なんかつまんない映画なんだろなって思って見始めたからなのか、
意外とおもしろかった。
内容は3つのパートでなりたってます。
観測所建設が始まるまでの役所や企業の入札などのパート。
勝新太郎が束ねる人足たちが
荷物担いで富士山を徒歩やタンクで登るパート。
渡哲也操縦するヘリコプターで観測所の骨組みを運搬するパート。
とにかく大変だっていうね。
富士山での建設作業の大変さ。
それだけなんすよ。
高山病とか台風の雨風が強いとか。
それをなんかドラマチックに見せるように頑張ってやってるんすよ。
地味でそんなのドラマになるの?って感じなんだけど、
あんまりドラマドラマしてない記録映像のような
たんたんとした画作りが逆に迫真の迫力をもって
見せるって感じで、なかなかよかった。
出演者が豪華で、どいつもこいつも味のある顔してるから
見れたなあ。
田中邦衛なんかすごい味わい深いですよ。
顔だけですべてを表現しちゃってるもんなあ。
山崎努の疲労感にじみ出る表情。
疲れ具合がいいです。
山崎努は下山して病気にでもなりたい気持ちですよ、
そうすればもう一度富士山に登らなくていいからっていうとこまで
追い込まれる。
山頂での仕事に疲れた男が、
誰かがやらなきゃいけない仕事だけど、
富士山頂に気象レーダーができたからといって
自分の暮らしになんの意味があるのかなみたいなこと
言ってるシーンがありました。
寝袋にくるまって凍えながらじっと耳を傾ける石原裕次郎。
石原裕次郎も家にほとんど帰れず山での建設作業に疲れ切ってます。
ほんとこれですよねえ。
まさに人生そのもの。
誰かがやらなきゃ仕方ない仕事を毎日毎日やって暮らしてるんだけど、
それがいったい俺の人生になんの意味があるのかな?って
誰しもふと思うことがあるわけで。
こんな辛い思いしてやる意味あるの?って
ほんと人生ってこれだわ。
まず入社したての新入社員のときに感じる。
次は仕事をおぼえて10年とか15年とかたったときに感じる。
そして40歳や50歳をこえるときにも感じる。
このこんなことしてなんの意味があるのか?という仕事や人生に対する
漠然とした不安や不満。
誰かにとって必要で、誰かにとっては大切なことかもしれないけども、
今、ここでこうして苦しい思いしてまで
自分がやらなきゃいけないことなのか?みたいな葛藤。
人生はそれの連続っていうかさ、
それしかないのが人生っていうかなあ。
人生の辛さを富士山頂に気象レーダーを建設するという物語で
表現してるからけっこうおもしろく見れたんだろなあ。
これは若いときに見ても全然ダメだったかも。
年食って辛さが年々強くなってるときに見るから味がわかるみたいな。
ついに気象レーダーが完成してあとは認可を待つだけというときに
台風が発生。
こんなときのためにレーダーを作ったんだから、
すぐに稼働させましょうと石原裕次郎が言うんだけど、
役人の芦田伸介は認可がまだだから待てってなるわけ。
でも、部長の宇野重吉の責任はもつからという一声で許可する。
レーダーはうまく働いて台風をとらえ
貴重な情報を送信できてよかったよかったってなるんだけど、
芦田伸介はその後九州に左遷されることになるのだった。
責任をとって左遷ということなんすかねえ。
辛いなあ。
これも人生ですね。
正しいことをしたとしても、報われないことがある。
いや、報われることのほうがまれなのが人生なのだ。
富士山頂での建設作業という難事業をやりとげた男たちだが、
称賛されるわけでもなく、大きな報酬を得たわけでもなく、
それぞれの人生に戻っていく。
なんだかプロジェクトXがおじさんたちに受けたのがわかるなあ。
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