同じ話なのに「エール!」はなぜ涙が出てしまったのか。なんでだろって不思議だったですね。これはやっぱりオリジナルのほうが欠点は多いけども、粗削りなぶん、感情に訴えかけてくるちからが強いからなのかもしれません。
コーダはエールのここが説明不足だから説明を足そう、ここの展開が突然だからスムーズにしよう、って感じで、改良を加えて形を整えている。不自然さをとりのぞいて、きれいに形を整えているので、エールより完成度があがってると思います。
ギャグも洗練されてる。全体的にパワーアップしてるし完成度があがっているのに、完成度でいえば低いエールのほうで泣いてしまったのか。そこがおもしろいところですねえ。理が勝ちすぎるとちからを失ってしまうこともある。
こうしたほうがわかりやすい、こうしたほうが自然な展開、こうしたほうが無理がない。その改善が逆に感情を揺さぶってくるちからを弱めてしまう。コーダのあとにエールを見てそう思ったなあ。
エールは説明されない部分が多いです。話も尻切れトンボでまとまらないし、展開も唐突で、自然な盛り上がりかたはしない。後半は急展開の連続でエンディングまで突っ走る。そういう荒っぽさがドラマティックに感じて、感情を揺さぶるんだろうなあ。
まあ、エール!もコーダもどっちも見て損はない映画ですが、好きなのはエール!のほうかな。
今までに見てて涙が出てきたり、感情が高ぶったり、好きだなあって思ったりする映画は、欠点が多いものが多いですね。
理屈は通ってない、不自然、理論的でない、ここ変だよねみたいな欠点だらけだけど、なぜか心に迫ってくるものがある。心に残る映画ってたいていそういうもんです。