全然挫折してない。主人公は勝ち組。普通に楽しく料理しておいしく食べましたみたいな。余裕の勝組人生。常に勝ってていつ挫折するんだよって待ってたけど最後まで挫折なし。おいしいもの作って食べる楽しさは伝わってきたけどね。
息子とのふれあいを描いていたけど、息子が物わかり良すぎだし、親父も普通だしで、なんもドラマがない。普通に良い家族だなあみたいな。飯うまそうだなみたいな。
斬新なメニューを日々考えてる凄腕シェフが主人公。雇われシェフなのでオーナーのダスティン・ホフマンといつも揉めてるんすよ。いつもどおりのメニューをやれっていうダスティン・ホフマン。つねにおいしいものを探究したいジョン・ファヴロー。
ネットの料理評論家ともめて騒ぎになって炎上したことがきっかけでレストランをやめることになる。再就職先も見つからず、どうしようかというときに、前から元妻に提案されていたフードトラックを始めることにする。
元妻の元夫のロバート・ダウニーJrから中古のフードトラックを手に入れて、頼れる片腕のジョン・レグイザモと夏休みの息子と一緒にキューバサンドイッチを売りながら旅をするうち、SNSで話題になりお客さんが大挙して集まり大繁盛。
なにこれ?なにからなにまでうまくいってみんないいやつだし主人公は世界一の幸せものだねっていう話になってる。挫折を知らない主人公。表面上、失敗して挫折してるという設定にはなってますが中身がそうなってないのはなぜなのか。
離婚してるし、オーナーとうまくいってないし、料理評論家ともめるし、フードトラック始めるためにクレジットカードの借金でぱんぱんだし、まだ小さな息子と父親としてちゃんとやれるか不安だしで、設定上は問題だらけ。
でも映画では全然問題あるようには描かれてない。うまい料理さえ作ってたら、なにもかもオールライトなムードで描かれています。
こういう一芸にひいでた主人公はたいてい性格に問題があったり酒癖が悪かったり苦手なものがあったりなにかしら問題ある設定でそれを克服するっていう展開になることが多いと思うけど、この映画の主人公は、そうじゃありません。
料理の腕はいいし、離婚した妻とも良好な関係だし、息子に常識人として大事なことを教えたり、いわれのない難癖には真っ向から反論する正義漢だしって感じで、かっこよく描かれてる。
それに腕のいい相棒もいるし人望もある。なんせ最後はもめて炎上騒ぎになった料理評論家が投資するからなんでも好きな料理作る店をやってくれって言ってくるんだから。それを断らない大人な主人公。え?断らないんかい!
他人より秀でた一芸をもちながら、性格も偏屈でなく常識人で悪くなく、周囲にも恵まれている。元嫁さんはモデルみたいだし、遊びで後腐れなくスカーレット・ヨハンソンと寝てたりと、なんだこりゃって思ったら、この映画ジョン・ファヴローの監督脚本主演映画なんだなあ。
だからこんなにかっこよく描いてるんだ。かっこいい俺。ちゃんとしてる俺。みんなから愛されてる俺。少し失敗したとしてもすぐにまた成功しちゃう俺。文句言ってるやつが悪くて、俺は正しいぞ。俺俺映画。自作自演のかっこつけ映画ってわけ。
まあ、でも楽しかったですね。うまいもの食べれたら、それでどんな深刻な問題もどうでもよくなるよっていうメッセージなのかもですね。エンドロール後に劇中で息子に作ってあげてたホットサンドの作り方のレクチャーをジョン・ファヴローがうけてるシーンがあってそれがいいんだよ。
先生がトーストに集中する、世界にこれしかない、これをしくじったら世界が消えるぐらいに没頭してパンを扱うっていってたのが印象的です。調理していくとパンが進化していくのがわかるとも言ってたかな。そこまでの思いと最新の注意で調理されたパンはただのパンだけどうまいでしょうね。