それでまた黒人と白人が車に乗る映画に負けたっていう話題になってましたね。まあ、どうなんだろ。黒人差別のことを取り上げた映画としてはよくできていたと思う。刑事の潜入捜査ものなんだけど、差別問題を俯瞰するような作りになってた。
刑事個人の戦いという感じには描かれてなくて、主役のジョン・デヴィッド・ワシントンにフォーカスしてなくて、彼もただの登場人物のひとりっていう感じがしました。そこなんだろなって思ったけどね。この映画よりもグリーンブックに票がいっちゃったのは。
グリーンブックも黒人差別をテーマにした映画だったけど、主人公たちの気持ちにフォーカスした作りになってたからなあ。人情ものというかお涙頂戴というか浪花節というかね。そういうのがやっぱり人を引きつける。
このブラック・クランズマンにはそういう人の感情に訴えるような人の気持ちの物語が描かれていなかった。差別問題の根深さ深刻さ悲惨さという面がメインになっていた。もっと主人公の気持ちの動きに焦点をあてた描き方してたら受賞してたんじゃないか?
話の時代設定は1970年代。黒人差別に対抗するブラックパワーを叫ぶ集会や運動、それを押さえつけるような白人至上主義をとなえる活動も盛んであちこちで衝突がおきてる時代。ジョン・デヴィッド・ワシントンは警察署初の黒人刑事として採用される。
潜入捜査がやりたいとKKKのメンバー募集に電話で応募。面接ということになってかわりにアダム・ドライバーが行くことに。こうして電話はジョン・デヴィッド・ワシントン、実際にKKKの人間に会うのはアダム・ドライバーという奇妙な潜入捜査が開始した。
ということなんだけど、潜入捜査のハラハラを描くのがメインじゃないので、捜査の過程はあんまりスリルもサスペンスもなくて、なんだかのどかな風景に見えてしまった。けっこうゆるい捜査なんすよ。
そりゃ地方のただの警察署の捜査だから、予算が潤沢じゃないんだろうけど、それにしてもゆるい。KKKの中でもこいつあやしいと思ってるやつがいて、家に行ってみたりしてんの。そしたらアダム・ドライバーじゃなくてジョン・デヴィッド・ワシントンが出てきておかしいと思われたりする。
でもなんか口先でてきとうにごまかしてやりすごす。他にも何度かバレそうになる危機があるけど、適当なこと言ってごまかすだけです。うーん、なんかオフビートなコメディみたいな感じで深刻さがない。
爆破事件とかもおきるんだけど、やっぱり緊張感がない。黒人たちの集会、白人たちの集会を交互に映し出したりして、差別の炎がとまらないというのを見せる。でもやっぱりなんだかコントみたいで深刻に感じない。
そう、なんだか真に迫ってこないんだよなあ。というのも最後に実際の集会や事件の映像が流れるんだけど、そっちの臨場感と迫力と深刻さがすごくて、そっちが印象に残ってしまって、それまでの映画がふっとんでしまったというのもあるかも。
10分やそこらの現実の映像のほうが、それまでのフィクションの映画より印象深いっていうのがなあ。