森の中で本の中の知識を教えたり、体を鍛えたりしたところで、それは社会から離れて自分たちだけの小さな世界でしか通用しないことで孤立していくだけなんすよねえ。
ユートピアを求めて実際に人生をかけて実践していたヴィゴ・モーテンセンと妻と子供たち。奥さんは途中で気がついちゃったんだろね。これは違うと。子供たちが大きくなっていくにつれて、その思いは大きくなっていく。
でも夫のことは愛している。板挟みになっちゃって精神を病んで自殺しちゃう。ヴィゴ・モーテンセンも薄々かんじてはいるんですよ。自分が自由を求めて森に引っ込んで子供たちに知識と知恵を与えてという生活は、なにか足りないし、矛盾していると。
知恵や知識を教えて、ナイフ一本で森の中でサバイバルする術をみにつけたとしても、それは一般社会では役に立たない。高度な知識や情報、言語を教え込んで、子供たちは優秀なんだけど、一方で盗みを働くことを無邪気に覚えさせている。
無理があるんですよねえ。ヴィゴ・モーテンセンも奥さんも優秀な人だったんだろうなあ。奥さんは弁護士で、実家は超大金持ち。超富裕層の生まれであるからこそ、資本主義や拝金主義の社会に疑問をもってヴィゴ・モーテンセンの森で暮らしてそこで子供たちを育てるという生き方に共鳴したんでしょうね。
理想をもって森での生活をやってたんだろうけど、やっぱ無理がでてきて、理想と現実の間で苦しんでいった。子供たちも年長になればなるほど、父親の生き方に疑問をもってきてる。
理想郷を追い求めて森で暮らしてたとしても、彼らは資本主義から逃れることができてない。むしろ、資本主義社会があるからこそ、森での暮らしがなりたっている。それが辛いですよねえ。
奥さんの遺言で火葬して灰をトイレに流してくれってあったから、家族みんなで灰をトイレに流してましたけど、トイレにあんなの流したらダメだろみたいな。つまっちゃうよみたいな。つまったトイレを誰が掃除したり直したりするの?みたいな。
妻を亡くしたことと娘が死にかけたことで、ヴィゴ・モーテンセンは自分の理想を追い求めた生き方が間違いだと認めざるを得ない。敗北を認めざるを得ない。辛いですねえ。一人でバスを運転して途中でバリカン買ってひげを剃り落とすのが切なくてね。
ヴィゴ・モーテンセンの教育方針は子供とちゃんと向き合うこと。10歳にもならない下の女の子が性行為ってなに?って聞くと、ごまかさずにちゃんと事細かに説明するし、麻薬って?聞かれると成分や効能についても事細かに説明する。
疑問にはごまかさず答える、知っていることは教える、知識を与え、その上で自分の考えをもつように育ててるんだけど、それはオープンなようでオープンじゃないんすよねえ。ヴィゴ・モーテンセンの良いと思ってる範囲から外れる意見は無視されてしまう。本当の自由はここにはない。
すり替えでしかない。チョムスキーの誕生を祝って子供たちにプレゼントしてましたが、クリスマスにやることを理屈をかえてやってるだけ。拝金主義がどうのこうのいうけども、やってることはスーパーマーケットで万引。外見や理屈のすり替えをやってるだけなんです。
そこの矛盾をちゃんと認めて、おれは間違っていたと子供たちに言える父親っていうのが、すごいなと。親って自分の間違いを認めないでしょう?子供相手に。絶対ごまかす。やっぱそれができるから、子供たちは反発しながらも、やっぱりとおちゃんについていくよってなるんだろね。
うーん、終わり方がちょっとなあって感じしましたね。森から出て新しい生活を始める家族。子供たちは学校に通ってる。長男はどっか遠くの国に旅立ってました。ハーバードやイエールなど名門大学に合格してたのに大学には行かないんだ。
結局、結論はでない。資本主義社会を否定して森で暮らすのは間違い。森から出てどう暮らしたらいいんだろう。それは彼らもわからない。極端はあかんよってことは確かですね。やっぱ極端なことや、過激なことは刺激は強くて快感だろうけど、答えにはならないってことだろね。
DMM動画で「はじまりへの旅」を見る